2年目を迎えた「リーダーと娘(Leaders and Daughters)」イニシアチブの目標は、次世代リーダーのキャリア構築加速を目指した議論の促進だ。
エゴンゼンダーは40か国で多様なリーダーとその「娘」たちとの公開討論会を開催。またオーストラリア、ブラジル、中国、ドイツ、インド、米国、英国の働く女性7000人を対象に調査を実施し、女性が職場での出世を追求する中で直面する課題や機会を探った。
調査の結果、若い世代の女性は幹部レベルへの昇進を望む一方で、年齢や職務レベル、そしてその国の経済発展の程度によって、出世願望に差があることがわかった。
上級職や経営幹部への昇進を望む女性の割合は、発展途上国のブラジル(92%)、中国(88%)、インド(82%)では高かった一方、先進国の米国(62%)、オーストラリア(61%)、ドイツ(58%)、英国(56%)では比較的低かった。
こうした差について意見を聞くため、エゴンゼンダーで米国の多様性施策を担当するシンシア・ソレダドを取材した。
筆者:上級職に就きたい女性は先進国よりも発展途上国の方が多いようですが、この差はなぜ生じているのでしょうか?
ソレダド:先進国の女性には、出世に伴う犠牲を払ってきた経験が多いのではないでしょうか。調査から、発展途上国よりも先進国の女性の方がワークライフバランスを重視していることがわかりました。女性はいまだにさまざまな社会的役割を果たすことを期待されており、それが障害になっているようです。私たちはそうした全ての役割をこなすことを今も期待されています。
発展途上国では女性が労働人口に加わるようになったばかりなので、まだ熱が冷めきっておらず、女性たちは自分が犠牲を払っているとは感じていません。この変化の一部となることを楽しんでいて、さまざまな可能性に対して本当に前向きな気持ちを持っています。一方で先進国の女性は、いまだ残る偏見にうんざりしています。あからさまな性差別こそはないものの、見えない敵と戦う方がはるかに難しい場合もあります。
筆者:調査では、対象国の中で起業家精神が一番高いのは米国でした。なぜでしょうか?
ソレダド:シカゴでの公開討論会に参加したレストラン経営者でソムリエのアルパナ・シンの話が良い例でしょう。シンはシカゴで定評のあるレストラングループに勤めていましたが、上級職に就く女性が多くないことに気づきました。その壁を破ろうと闘うよりも「自分のレストランを開いたらどうだろう? 自分の周りに自分の文化を作れるのに、企業文化を変えようと努力する意味があるだろうか」と考えたとのこと。
一つには、女性の志に報わず、女性にリーダーシップの可能性を認めない構造への反発だと思います。また先進国では、小企業への融資やテクノロジーなどの起業支援インフラに女性がアクセスしやすいこともあります。先進国には無意識レベルでの偏見はいまだに存在しますが、あからさまな差別や、女性のキャリア開始を妨げる社会的障壁はもう存在しません。さらに、自立することは米国文化の中核となっています。