4月6日・7日の2日間、東京・永田町のホテルニューオータニにて、今年で5回目となる「新経済サミット(NEST)」が開催された。当日は天気にも恵まれ、満開を迎えた桜とあいまって例年以上の盛り上がりを見せた、NESTの様子をレポートする。NESTは、新経済連盟(代表理事:楽天 三木谷浩史)が主催するグローバルカンファレンスだ。新経済連盟では、新産業の推進を目的に、民間の立場から政策提言や、啓発活動などを行っている。NESTでは、この目的を達成するために、イノベーション(創造と革新)・グローバリゼーション(国際的競争力の強化)・アントレプレナーシップ(起業家精神)をテーマに基調講演やパネルディスカッションを行っている。
特に注目を集めるのはITやデータを活用した最先端技術だ。毎年豪華なゲストが呼ばれているが、今年もベン・ホロウィッツやトム・ケリーなど世界をリードするアントレプレナー・イノベーターが参加した。
また、会場に展示エリアが用意され、今年は38のブースが設けられたほか、オンラインビジネスマッチングツールが導入され、好評を博した。本サミットでは、参加者同士が名刺交換を行い、ビジネスのきっかけを得ることも大きな目的とされているが、このツールを使えば、当日参加する人を事前に把握し、アポイントを取ることができるのだ。
毎年好評のピッチイベント「NEST STARTUP CHALLENGE」では、今回新たにスタートアップの起業家に加え、彼らを支える団体や組織である「エコシステムビルダー」達も推薦者としてステージに上がり、日本のさまざまな形のスタートアップエコシステムが披露された。
◎「NEST STARTUP CHALLENGE」の参加メンバー。中央の100万円のプレート持つ4人が優勝者(左からInfinity Ventures Summit、ポケットマルシェ、AGRIBUDDY、未来2017の登壇者)優勝したのは、ポケットマルシェ(Infinity Ventures Summit推薦)、とAGRIBUDDY(未来2017推薦)の2組。ポケットマルシェは全国の農家の人々や漁師と会話しながら食材を買えるスマホアプリ。AGRIBUDDYはGPS測定器と同じ機能を持つアプリで、Google Mapsを使用した地図上に詳細な面積や作業日、計測者などの計測データを表示することができる。この機能を利用して、カンボジア農家の資金管理を助けていることが評価された。
開催初日には、楽天代表取締役会長兼社長であり、新経済連盟 代表理事の三木谷浩史氏がモデレーターとなってベストセラー『Hard Things』の著者ベン・ホロウィッツ氏の基調講演が行われた。ホロウィッツ氏は人工知能(AI)やIoT、シェアリングエコノミーといった新潮流が急速に進展している状況を示しつつ、「ブレイクスルーを阻害してはいけない。新技術に対するセキュリティ意識を高め、危機感を募らせるのではなく、たとえばアンチドローン(ドローンの飛行を不可能にする技術)のように、一斉に普及するドローンの動きを無能化する技術も必要になってくるのではないか」という独自の意見を披露した。
◎三木谷氏(左)がモデレーターを務めたベストセラー『Hard Things』の著者ベン・ホロウィッツ氏(右)の基調講演二日目は、セッションの一つとして「女性目線で考えるスタートアップエコシステム -シリコンバレーとアジア-」を開催。Alsop Louie Partners ベンチャーパートナーのアーネスティン・フー氏 、RHL Ventures 共同創業者のレイチェル・ラウ氏、Impact Hub Singapore CEO兼共同創業者であり、Hub Ventures Fund マネージングパートナーのグレース・サイ氏が登壇し、当サイト編集長の谷本有香がモデレーターを務めた。シリコンバレーには大きな資金源があることや、シリコンバレーでは失敗は勲章になるが、アジアでは失敗できないといったマインドセットに違いがあることなど、シリコンバレーとアジアの比較が展開されたほか、ダイバーシティーについても触れ、話題は多岐に渡った。
「世界で最もイノベーティブな会社」に選ばれたIDEOの共同経営者であるトム・ケリー氏は、「イノベーションとクリエイティビティの文化をいかにして醸成するか」をテーマに講演。ケリー氏は、ヒット商品を生み出す3つの条件のひとつとして「すべてのモノにはストーリーが必要。制作の背景やつくり手の物語がなければ商品は売れない」と語った。
NESTに参加した福岡県の日本コムクエストベンチャーズ代表の西島銀次朗氏は「当社では、自然災害時に活躍する垂直離着陸可能なIoT飛行機型ドローンを開発しています。世界中の人が集まる場で、自分の事業について話すことができ、とても貴重な機会となりました。大手電機メーカーから声をかけてもらえて、今後直接やりとりをしてビジネスに展開していけるのではないかと期待しています」と、感想を語った。
サミット終了後には、同ホテル「芙蓉の間」にてネットワーキングパーティーが開催された。サントリーウイスキー「響」のスペシャルバーも設置されたほか、開会の際には会場内で「響 JAPANESE HARMONY」のハイボールが配られ、乾杯の音頭がとられた。
◎ブレンデッドウイスキーの最高峰サントリーウイスキー「響」を飲みながら。会話が弾むネットワーキングパーティーの様子乾杯の挨拶では、新経済連盟理事の由利孝氏(テクマトリックス代表取締役社長)が「今回の講演のなかで特に印象に残ったのは、Mistletoe代表取締役社長兼CEOの孫 泰蔵氏が『過去20年におこったテクノロジーの変化よりも、これから5年間に起きる日本社会の変化の方が、インパクトが大きいはず』と話していたこと」と述べ、未来を担うイノベーターたちへ期待を寄せた。
◎パーティー会場に設けられたサントリーウイスキー「響」のバーカウンター。この日のために「響 JAPANESE HARMONY」も用意されたパーティー参加者は、日本人の繊細な感性を表現する、洗練された味わいのウイスキー「響」をハイボールやロックなど好みの飲み方で楽しんでいた。「響」がアイスブレイクの効果をもたらし、率直な意見を交わし合いながら有意義な時間を過ごした。