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ラトビア財務相 ダナ・レイズニエツェオゾラ (photograph by Junji Hirose)

危機の続くEU経済で例外的に安定成長を続けるラトビア。欧州の「今年の財務相」に選ばれた異色の財務相に、ラトビアで多くの女性が活躍できる背景を聞いた。

バルト3国の一画を占めるラトビアの経済が好調だ。面積は日本の6分の1、人口は200万人弱ながら、2016年の経済成長率(推計)は3.5%と、EU全域の1.7%を大きく上回る。ユーロ圏入りを14年に果たし、昨年は経済協力開発機構(OECD)にも加盟した。

英「ザ・バンカー」誌が1月に発表した「今年の財務相」で、欧州から選ばれたのはラトビア。前職の経済相時代から財政規律の確保と経済成長の両立に貢献し続けてきた点が評価された。

そのダナ・レイズニエツェオゾラ財務相が今年初頭、日本を訪問した。両国間の租税条約への署名のほか、同相によると「ICT分野の日本企業との接触やラトビア国債に投資してくれる層の多様化も狙い」だった。

彼女にとって初めての訪日は日本のみの外遊で、東アジア諸国歴訪などではない。ラトビアはロシアや欧州の景気減速を受けて新市場の開拓が求められる中で、日本市場との関係強化に乗り出している。

注目したいのは、レイズニエツェオゾラ財務相のキャリアだ。女性で、35歳という若さ。政府高官の妻にして1歳から12歳までの4人の子を持つ母であるのみならず、欧州ユース大会での優勝経験やグランドマスターの称号を持つチェスの達人でもある。

女性の地位向上を阻む「ガラスの天井」はないのか、という質問に同相は「ラトビアにはありません」と答える。「保育園など女性が働く環境はよく整備されていて、女性割り当て義務などがなくても、ビジネスでも政治でもトップ層にいる女性の比率は高い」という。

なぜ、ラトビアは女性が活躍しやすい社会になったのか。

「ラトビアは小さな国であるがゆえに、国内の人材を活用する必要があったし、第二次世界大戦で多くの男性が戦死して女性の活動が不可欠でもあった。さらに、現在のヨーロッパ情勢の中では、移民を積極的に受け入れることも難しい。かつてのラトビア社会はもっと保守的だったけれど、女性は自分たちの出世を恐れることはないと男性に納得させてきたのです」

男性も、女性も活躍しなければ社会は発展しない。ラトビアの置かれた環境が国内労働力の活用を後押ししてきたのだ。

「仕事」である政治と「生き甲斐」だというチェスの両立も、本人やラトビアにとっては自然なことだ。同相は昨年、国際大会にラトビア代表チームの一員として出場し、世界チャンピオンの中国選手に勝った。その際、開催時期が重なったEU財務相会合を欠席したのだが、問題視はされていない。

能力重視や女性の活躍、ワークライフバランスといった課題に真摯に取り組むことで得られる成果。それを体現しているのが彼女であり、ラトビア経済なのだ。


ダナ・レイズニエツェオゾラ◎ラトビア財務相。1981年生まれ。ストラスブールにある国際宇宙大学でMBA取得。幹部地方公務員などを経て2010年より国会議員。14年に経済相、16年2月より現職。チェスでは98年、99年、欧州女子(18歳以下)選手権で優勝。夫はラトビア投資開発庁長官、3女1男の母。

岡田浩之 = 文

 

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