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2017.04.13

加速する米小売店舗の閉鎖、赤字の裏にある「本当の理由」

Photo by Mario Tama / gettyimages

米国の靴専門店ペイレス・シューソース(Payless ShoeSource)が4月4日、連邦破産法11条の適用を申請した。アパレル業界ではこの数か月、ザ・リミテッド(The Limited)やウェットシール(Wet Seal)など、数多くの企業が同様に破産申請を行った。

これら3社だけでも1000近くの店舗が閉鎖される予定だ。小売とリテール・テクノロジーに関する調査・分析を行うファン・グローバル・リテール&テクノロジーの推計によれば、年初から4月4日までに閉店が発表された米国の大手チェーンの店舗数は、合わせて2507に上る。2016年中に大手チェーンが閉鎖した1674店舗を既に大幅に上回っている。

さらに、閉店が相次いでいるのはファッション業界だけではない。家電量販店のラジオシャック(RadioShack)、家具・家電製品のHhグレッグ(Hhgregg)、オフィス用品のステープルズ(Staples)、ドラッグストアチェーンのCVSも多くの店舗の営業を中止すると発表した。だが、それでも最も多くの実店舗を閉鎖しているのはアパレル業界だ。ファン・グローバルのまとめでは、今年すでに閉鎖が発表されている2507店舗のうち、2060店舗(82%)がアパレル部門の小売各社または百貨店の店舗だ。

閉鎖の主な理由

店舗閉鎖の急増から推測できるのは、どのようなことだろうか?主に、次の3つの点だ。

1. 衣料品需要の低迷

ガソリン価格の低水準が続いたことで、米国の消費者は家計に余裕ができている。だが、その分をファッションではなく、自動車や住宅に充てている。小売売上高に関する米国勢調査局の最新のデータによれば、今年2月のアパレル専門店の売上高は、前年比1%減となった。金利が上昇する中、仮に今後ガソリン代が上昇すれば、消費者が再び衣料品を購入するようになるとは考え難い。

2. 「専業」の人気が復活

店舗のオムニチャネル化が注目を浴び、インターネット「専業」の小売業者が実店舗をオープンする一方で、これまで店舗を運営してきた小売各社がネット専業に移行する傾向が見られ始めている。そうした小売業者の一つが、ファッションブランドのビービー(Bebe)だ。ザ・リミテッドも同様の転向を模索したが、破産申請後はオンラインでの販売を中止している。

3. 「現実」に対する理解の促進

店舗閉鎖の理由は、経営破綻だけではない。例えば百貨店のJ.C.ペニーやメイシーズは、将来に備えて店舗ネットワークのスリム化を推進している。今後はさらに多くの小売業者が店舗数を削減する必要性を認識し、同様にネットワークの縮小に乗り出だろう。年内に閉鎖する店舗数は、2507にとどまらないと考えられる。

小売各社が閉鎖を発表した店舗数

ペイレス・シューソース:400
ザ・リミテッド:250
ラジオシャック:187
ウェットシール:171
ビービー・ストアーズ:170
クロックス:160
シアーズとKマート:150
J.C.ペニー:138
BCBG:120
アメリカン・アパレル:110
ゴードマンズ:101
Hhグレッグ:88
ステープルズ:70
メイシーズ:68
MCスポーツ:68
ゲス:60
チコズ:50
ルーシー・アクティブウェア:44
ガンダー・マウンテン:32

(2017年4月4日現在、出典: ファン・グローバル・リテール&テクノロジー)

編集 = 木内涼子

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