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宇宙旅行について夢を膨らませることは長い間、最富裕層の娯楽だった。ベゾスの宇宙開発企業であるブルー・オリジンに加え、リチャード・ブランソンのバージン・ギャラクティックや米マイクロソフトの共同創業者、ポール・アレンのバルカン・エアロスペースがある。また米テスラのイーロン・マスクCEOのスペースXも忘れてはならない。
スティーブ・ジョブスがかつて言ったように「宇宙に打ち跡をつける」ことを目指す、大胆で時にナルシシストすれすれの華やかな億万長者はますます減ってきている。むしろ大半のテック系富豪は冒険よりも身を隠す方に労力を注いでいる。
「ヘリコプターは常にガソリンを満タンにしておくし、空気浄化フィルターをつけた地下シェルターも持っている」。文明崩壊に備えているある投資会社の代表は、米文芸誌ザ・ニューヨーカーにこう語った。また同誌によると、米リンクトインの共同創業者リード・ホフマンは、シリコンバレーの億万長者の半分以上が地下シェルターなど何らかの「終末保険」を準備しているとみている。
その最たる例が、ピーター・ティールだ。米ペイパルの共同創業者でサンフランシスコ在住ベンチャーキャピタリストのティールは、ニュージーランドで事業投資を行って同国の市民権を得たことで論争を引き起こした(具体的な投資額は不明)。ニュージーランドはかつて、世界からの隔離に苦しんでいたが、現在はその「距離」が最大の武器に変わるのを目の当たりにしている。
最悪の事態に備えて極端な自立を目指す運動は、常にニッチな人気を集めてきた。サバイバリストやプレッパーと呼ばれる人々は、食料を備蓄して自然災害に備えたり、人為的な社会崩壊が起きたときのために銃やバイク、金の硬貨を購入したりしている。ジャングルで生き延びるために弓術を学ぶ者もいる。
しかし、かつて少数派だったこの動きが、今や急速に主流化している。テック企業やヘッジファンドの幹部ら、いつ起きるかもしれない社会崩壊から身を守る資金力のある人々が、次々と終末論者らの仲間入りをしているのだ。