世界2位の富豪、ジェフ・ベゾスは人類最後の希望になるのか?

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21世紀版ノアの箱舟

ドイツ農村地帯の山間部の地中奥深くに、約2万1200平方メートルを誇る巨大な不動産複合施設ビボス・エウロパ・ワン(Vivos Europa One)が存在する。かつては軍関係者と軍用品のための秘密施設として利用されていたが、今は巨大客船のような内装が施されている。

最富裕層が世界の終わりに逃げ込める場所として宣伝される同施設は爆発に耐える地下シェルターで、核の衝撃波や化学戦争、津波、竜巻にも耐えることができる。

共有エリアにはレストランやパン屋、パブ、ワインセラー、アートギャラリー、子どもの遊戯室、ペット預かり所、美容室、映画館、プール、ジムがある。また手術室がついた完全装備の病院や、さまざまな食料・医薬品を保管する倉庫、種子バンク、何百万という動物学的な遺物や遺伝子提供者のゲノムを集めて保管するDNA保存室も用意されている。まるで、クルーズ船運航大手ロイヤル・カリビアンが手掛けた21世紀版ノアの箱舟といったところだ。

このように要塞化し、核兵器から守られたシェルターからは、孤立主義の雰囲気が漂う。まるで最富裕層は人類への希望を全て失い、地下にノアの箱舟を建設することに全精力をつぎ込むことを決心したようだ。

もちろん、迫りくる惨事に対して現実逃避を試みたのは富裕層のサバイバリストが最初ではない。遠い昔、グリーンランドに定住した古代スカンジナビア人も全く同じ行動を取っていた。

グリーンランドのバイキングたちが消えた理由

古代スカンジナビア人がノルウェーからグリーンランドにやって来たのは紀元1000年ごろ。北極海に横たわる広大なその土地が「緑の大地」と呼ばれているのは、入植者の赤毛のエイリークがアイスランドよりも良い印象を与えたいと考えたためだった。

古代スカンジナビア人は牛、羊、ヤギを育てるために干し草を生産。また、長い冬を越すために森の木を切り倒して燃料とし、草の生い茂っていた斜面を家畜の牧草地とした。しかし、彼らはこの地域の唯一の資源であった肥沃な土地を急速に疲弊させていった。

だが解決策は、最初から目と鼻の先にあった。近隣に暮らしていたイヌイットは冬の間、最も確実で数も豊富なアザラシと魚を狩って食料としていた。しかし古代スカンジナビア人はそんなイヌイットを蔑視し、ヨーロッパ式農業を断固として変えなかった。牛は地位の高さの象徴であり、牛肉は高級食だった。

グリーンランドのバイキング社会が崩壊した究極の原因はその経済だけではない。社会的な失敗も大きな原因だった。ピュリッツァー賞を受賞したカリフォルニア大学ロサンゼルス校のジャレド・ダイアモンド教授(地理学)は、同社会の最期の日々を簡潔に「定員超過の救命ボート」に例えている。
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編集=遠藤宗生

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