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世界37カ国、700万人が愛読する経済誌の日本版

三井化学の淡輪敏 代表取締役社長(写真=佐藤裕信)

東京ベイエリアの高層ビルの中にある社長の執務室。その中央に、三井化学の社長、淡輪敏の本棚がある。経営の本が並ぶが、彼が影響を受けた本として真っ先に挙げたのが、意外にも荻生徂徠の『徂徠訓』だった。

「30代半ばごろ、飲みに行ったお店で教えてもらいました」と、淡輪は笑うが、この本が彼の人生にとって大きな出会いとなる。

「唸らされることばかり書かれていますが、なかでも示唆に富んでいたのが、“下の者と才を競うな”という教えです。上に立つ者には、部下がもつ知識や経験を尊重しきれず、部下と競おうとする意識がありますが、それを払拭すれば、風通しのよい組織になるというのです」

この「風通しのよさ」こそ、淡輪が意識してきたことだ。いま国を挙げて「働き方改革」が推進され、労働環境の改善が求められているが、彼は組織づくりの本質を徂徠に見いだし、「風通しのよい組織こそ、社員は明るくなり、その明るさがツキを呼ぶ」と社内で言い続けている。

「社長がツキなんぞに言及するのは珍しいかもしれません。しかし、明るいところには人も情報も集まります。そうやって生まれたネットワークがツキを呼び込むのです」

淡輪が社長に就任した2014年、三井化学は構造改革の真っ只中にあった。総合化学企業として自動車から衣料、農業分野など多岐にわたる素材と技術を提供して産業を支えてきた。しかし、ウレタンやフェノールなどの石油製品が、中国の供給過剰によって市況が暴落。環境変化への対応が必要となっていた。

三井化学発足後初となる、鹿島工場の操業を停止。配置転換を余儀なくされた鹿島の従業員を説得するため、何度も現地に足を運んだ。その場凌ぎの懐柔は一切行わず、言葉を尽くした。

「いろんな思いで努力し、結果が出せると社内は明るくなります。その明るさがまた次なるツキを呼び込むのです」

不採算部門だったウレタン事業の再配置により黒字化を達成し、同時にターゲットをモビリティ、ヘルスケア、フード&パッケージング、次世代事業の4つに定め、2025年までに1兆円を投資する成長戦略へと軸足を移そうとしている。

「幅が拡散しすぎている感もありますが」と笑う淡輪だが、その判断の背後には、「いいものをつくること」にこだわりすぎてきた化学メーカーとしての反省がある。

「これまでは、当社の技術に立脚して良い素材をつくりさえすれば、何とかなるという気持ちがありました。しかし、いまは自前ではなく、当社にない技術をもつ他企業とタッグを組んで物をつくり上げていく時代です。そのため、研究サイドにはファーマー型からシェフ型へ頭を切り替えるよう意識改革を促しました」

文=飯塚真紀子

 

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