「孤独」から逃れる方法はあるのか? ミレニアル世代記者の考察 

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ある凍てついた闇夜、百貨店メイシーズ経営者のイジドー・ストラウスとその妻は、沈みゆくタイタニック号の甲板に立っていた。救命ボートには妻の席が確保されていたが、彼女は「私たちの運命は一つです。あなたの行くところへ私も行きます」と言い、頑なに夫のそばから離れなかった。それが、人々が見た40年連れ添った夫婦の最後の姿となった――。

個人主義の現代社会では、このような絆は稀だ。せいぜい「あなたの行くところへ、いつか訪ねるかもしれない」といったところだろう。

数週間前、筆者は「孤独は伝染する ひとりぼっちの若者が増えていく理由」という記事を書いた。そこでは、孤独な人は関係を持った相手をも孤独にすること、インターネットへの依存によって孤独な人の数は増える一方であることなどを述べた。

猿の社会では、群れからの孤立が寿命を縮め、肥満や糖尿病を引き起こし、精神・性的発達を妨げ、コルチゾール値の増加をもたらすという実験結果がある。シカゴ大学の心理学教授ジョン・カチオッポの著書「Loneliness: Human Nature and the Need for Social Connection」によると、社会から孤立した生活は、高血圧や運動不足、肥満、喫煙と同等の悪影響をもたらす。

また、孤立した人はそうではない人に比べて心臓病の死亡リスクが2倍以上になるという調査結果も発表されている。より多くのストレスを抱え、創造力や自尊心が低く、自身の人生をコントロールできていないとのデータもある。

では、私たちはどうすれば孤独でなくなるのだろう?

筆者は、人生の優先事項が鍵になると考える。人が人生において他者とのつながりを優先する傾向は、時代とともに減少してきた。豪クイーンズランド大学の研究では、1978年から2009年までの間に、若者の主観的な孤独は減少し、客観的な孤立は増加した。2009年の高校生は「(調査期間初期の高校生に比べて)付き合う友人の数はより少なく、友人を増やしたいという欲も少ない」と、同論文の著者は述べている。

この傾向は筆者自身にも当てはまる。大学を卒業して以降、友人関係を後回しにするようになった。先月も、お茶に誘ってくれた相手に「今は仕事が忙しすぎて、友人を作る余裕がありません」とメールしたばかりだ。多くの社会人にとって、親友が大学時代の友人であることは、社会に出てからの友人作りに消極的であることと無関係ではないだろう。
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編集=海田恭子

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