ビジネス

2017.04.11 15:00

東芝に見る「海外進出における企業統治」の教訓

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企業統治に必要な「人材」の条件

ここから先は私の追加的な意見である。買収先の企業統治に成功するためには、親会社から派遣されてくる役員が、買収子会社の経営陣に“尊敬されるような人材”でなくてはいけない。子会社の事業に精通していること、その場で決断できることは必要条件の第一だ。英語をネイティブに負けないように使いこなせる、議論ができるということは必要条件の第二だ。必ずしも親会社の指示をそのまま伝えるのではなく、子会社をよくするために尽力していることを見せることも信頼を得るためには重要だ。尊敬されなければよい統治はできない。
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欧米では、若いころからいろいろな企業を渡り歩いて、専門性を磨く専門的なトップの経営者(あるいは財務担当、あるいは開発や企画の専門家)が多くいる。そこからいちばん最適な人材を引っ張ってくることも重要だが、その人を管理できないといけない。これが、日本発のサラリーマン社長やその部下にはなかなかできないのだ。

日本の会社の子会社になることは、市場の厳しい目にさらされることもなくなり、ある意味、“ぬるま湯”につかることになる。よほど、きちんと企業統治をしなければ、業績が下がっていっても不思議ではない。手綱を引き締める現地の経営者をきちんと把握していくことが、買収成功のカギである。もちろん、本社からのマイクロマネジメントは避けたほうがよい。現地で有能な経営者を発掘して、その活動ににらみを利かせながら監督するという親会社の人材が必要なのだ。残念ながら、日本の経営者には、いまだに国際的な活躍ができる人はかなり限られているのかもしれない。

日本の多くの分野の産業では、人口減少で、将来国内市場規模が縮小していくものが多い(例外は、医療・介護)。そのなかで、海外に活路を見つけようという企業が増えている。保険、銀行、証券など金融系も積極的に海外の同業他社を買収している。商社は資源系、流通系など幅広い会社群を買収している(製造業では、トヨタを筆頭として、M&Aではなく、自社で工場建設をして成功している)。
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しかし、買収をするまえに、自分の会社が十分に国際化しているのか、現地に派遣して企業統治をすることができる人材がどれほど育っているのかを、自問してみることが重要だ。

文=伊藤隆敏

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