ビジネス

2017.04.12

ソメイヨシノと「流行」の共通点[オトコが語る美容の世界]

okutatsu_1218 / Shutterstock.com


女性はいつの時代でも化粧に関心があると思われるだろう。ヘアメイクは紀元前から流行しており、占い業や飲食業と同じく歴史が相当古い。そしてまだまだ続いている息の長いビジネスである。いつの時代、どこの文化圏でも、冠婚葬祭にはヘアメイクは付き物である。まだ記憶に新しいガングロや、近年のマスカラメイクの台頭も、じつは流行の産物である。

このマスカラ流行の原点は、およそ100年ほど前の事件にさかのぼる。ある考古学者がエジプトで財宝をみつけた。ツタンカーメンという世界最大級の黄金の財宝が砂の中から発見された事件である。ネットのない時代でさえ1日で世界をまわったという一大事件であり、読者もなんとなくイラストが描けそうなくらいイメージが明確な財宝だろう。

このマスクの顔にエジプト人として目の周りがきっちり黒いアイメイクが施されており、黄金のツタンカーメンが新聞にのると、歴史的背景よりも“見た目”が強烈だったらしい。この時期を発端に欧州の女性の間でアイライナーやマスカラの流行が始まったと言われている。

超豪華なもののインパクトは、相当大きいのだ。今でも、ファッションアイコンになる人が、豪華なダイヤのティアラのついた王族だったり、黄金のドレスを着たの歌手なのも頷ける。また、当時、欧州の女性に文字情報よりもアイメイクの写真が強烈であったのは、今の日本の女子高生が新聞記事より画像に反応する心理と近いのではないか。

花見の桜はソメイヨシノが圧倒的であり、多くのソメイヨシノが同じ木の接ぎ木からできた、言わばクローンである。開花時期が一緒になり、開花予想もしやすいわけだ。春の色である桜色の流行も、日本ではソメイヨシノのように同じ色が日本に広がる。

素直に多くの人と一緒にソメイヨシノを楽しんでも良いのだが、なんとなく開花がずれた姥桜を愛でるようになった。これは流行を達観できる感性になったのか、それとも新しい出会いへの期待感を忘れた感動の薄い中年になったのか──。花見をしながら“流行”について考えてみてはいかがであろう。

文=朝吹大

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事