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放送作家・脚本家、「くまモン」の生みの親。


僕の好きな池波正太郎さんの、あるエピソードを紹介しよう。

池波さんは、タクシーに乗ったら必ずチップを払っていた。すると、どんなに機嫌の悪い運転手でも、たいがいニッコリする。自分が降りたあとも、運転手は気分が良く、次に乗車したお客様にも感じ良く応対する。そのお客様は「今日は良いタクシーに乗ったなあ」と思うだろうし、一日を気持ち良く過ごせるから、その人に接した人もみんな気分良く過ごせる。

つまり、自分の投じたわずか数百円のチップが、池に石を落とすと波紋が広がっていくように、多幸感を広げていくのだ。これがダンディズムである、と池波さんは書いておられた。

僕も連載第1回に書いたけれど、お金を生き金にするのも死に金にするのも、使い方次第。池波さんのチップは、数百円でも生き金になるという見本であり、誰もが今日から始められる素敵な使い方だなあと思います。

エンターテインメントタクシーを増やす

京都には「京都グルメタクシー」という個人タクシーもある。元フレンチシェフがドライバーで、通常の観光案内にプラスして、美味しいお店に連れていってくれるのだ。

このアイデアを都市ぐるみで行ったらどうだろう。相乗り制度もあって、お昼時に近くにいるグルメタクシーをスマホで見つけることができ、「いま3人乗車中。あと1枠あります」なんて案内が入り、数人が事前予約のお店に連れていってもらえたら、とても便利だと思う。

いっそ東京オリンピックに合わせて、都内を走る50台をグルメタクシーにしてみたらどうか。全員英語ができて、天ぷら、焼肉、寿司などの良店に連れていき、乗車賃+サービス料を頂戴する。料金は数人で割るから、それほど高くは感じない。僕は熊本でこのグルメタクシーをやりたいと思っているのだけど、その際、表示は「空車」ではなく「空腹」にしようと思っています(笑)。

東京にもかつて、素晴らしい音響で音楽を聴きながら、東京を一周するジャズタクシーが走っていた。オーディオマニアの安西敏幸さんが考案された「ジャズクルージング」は非常に人気を博したという。

このように、何かに特化したタクシーを、運転手の趣味に応じて自由に企画させるのだ。グルメタクシー、ジャズタクシー、ロックタクシー、クラシックタクシー、写真スポットを案内するカメラタクシー、絵を描くのに良い場所や美術館に連れていくアートタクシー、江戸時代の地理を教える江戸タクシーなどなど、いろんな可能性が考えられる。

ひとり当たり年間50万円の予算を渡し、100台の東京プレミアムタクシーを走らせるとしたら、年間5000万円。ドライバーはその予算をお客様にいかに還元するか、個別に考える。たとえば銭湯タクシーではオリジナルの手ぬぐいを渡すとか、江戸タクシーなら江戸のパンフレットをつくるとか。それこそ日本交通の川鍋一朗さんだったら共感してくれるかもしれないですね!

タクシーはただの交通機関ではなく、その街をおもしろくするメディアになり得る。それぞれにもっとエンターテインメント性があれば、移動だけの人ではないお客様が増える、と僕は思っている。

有意義なお金の使い方を妄想する連載「小山薫堂の妄想浪費」
過去記事はこちら>>

イラストレーション=サイトウユウスケ

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