環境問題に関する研究や政策提言を行うエンバイロメンタル・プログレス(Environmental Progress)のマイケル・シェレンバーガーは英紙フィナンシャル・タイムズへの寄稿で、ウェスチングハウスの破綻は業界の統合に向けた機会を提供するものだと述べている。
つまり、「(今回の)危機は原子力発電そのものだけでなく世界のために、原子力発電を救う機会になる」というのだ。原発は標準化を通じて自らを救うことになるという。
歴史を通じて、一つのシンプルな設計方法で何度も繰り返し同じものを作っていくことは、原子力をはじめさまざまな技術を手頃な価格で提供可能なものにしてきた唯一の方法だ。そして、それは間違いを減らす方法でもある。
シェレンバーガーが指摘するとおり、原子力発電の方法に関する標準化の重要性は1970~80年代にかけて、フランスで実証された。原子力発電所の建設コストは設計を変更すれば上昇するが、同じ建設業者が同じ設計の原子炉を建設すれば、建設コストは低下することが確認できた。1990年代の韓国、ここ10年間のアラブ首長国連邦の例を見ても同じことが言える。
過去に手掛けたものと同じ設計で建設することのもう一つの利点は、使用する部品やサプライチェーンについて既に知識があるということだ。それが、実質的なイノベーションとコスト削減につながる。
こうしたサプライチェーンがあれば、ウェスチングハウスが手掛けるジョージア州ボーグル原発とサウスカロライナ州のVCサマー原発でも、コストの超過は防ぐことができたかもしれない。
原発などの建設プロジェクトに必要なのは、経験豊富な人材と企業だ。そして、技術者たちの意見を聞く態度だ。東芝が選んだショーやその代表者のような人物の話に耳を貸すことではない。