「次世代のインテル」NVIDIAに学ぶ、飛躍的進化への道筋

ジェンスン・フアン NVIDIA創業者兼CEO

“次世代のインテル”の呼び声高い米半導体大手エヌビディア。ゲーム屋からAI(人工知能)技術の黒子役へ。なぜ、見事な進化を遂げられたのか─。


「社内であるゲームをしていましてね」

いま最も注目集めるベンチャーキャピタルの米アンドリーセン・ホロウィッツ共同創業者、マーク・アンドリーセンは笑みを浮かべながらこう続けた。「我が社がヘッジファンドだったら、どこに投資するか?というものです。我々の結論は『エヌビディアに全資金を投下してもいい』というものでした」

その理由は明確だ。アンドリーセン曰く、「様々な深層学習(ディープラーニング)を活用しているスタートアップへ投資しているが、本当にどこもエヌビディアのプラットフォームを使っているのです」。

それはまるで1990年代に誰もがこぞってWindowsを、2000年代後半にiPhoneを、プラットフォームとしていた状況に似ているという。

かつて、23歳にしてウェブブラウザ「Netscape Navigator」を開発し、ビル・ゲイツ率いるマイクロソフトの「Internet Explorer」としのぎを削ったこともある“元・天才起業家”であり“著名投資家”であるアンドリーセン。彼をはじめとして、並みいる投資家たちがこぞって画像処理半導体(GPU)大手の米エヌビディアに熱い視線を注いでいるのには理由がある。

「求めている人すらいなかった」

17年1月4日。コンシューマー向け家電見本市「CES 2017」の開幕に先がけて、エヌビディアのジェンスン・フアンCEOが基調講演を行った。これまで家電や電機業界のキーパーソンが登壇してきた講演に、GPUメーカーであるエヌビディアが登場したという事実は、彼らの作るチップとそれを搭載した製品が存在感を高めていることの表れだ。

「世界初のAI(人工知能)スーパーコンピューター」──。

エヌビディアが16年夏に開発した最新のチップTesla P100を8個搭載した「DGX-1」である。演算速度は170テラフロップで、従来のサーバー250台分に相当する。

今回の講演で、フアンは自動車部品大手の独ボッシュ、ZFなど4社との提携を発表。既に独アウディのほか、米フォード・モーター、独BMWとダイムラー、米テスラモーターズも、自社の自動運転車にエヌビディア製品を採用するとしている。

自動車業界だけではない。フェイスブックやHTCが発売するバーチャルリアリティーのヘッドセット、マサチューセッツ総合病院をはじめとした医療機関のCTスキャン、株式の売買やオンラインショッピングのアプリ、ドローン、果ては「ジューン」というかわいらしい名前のオーブンにまで、エヌビディアのチップが搭載されている。

「我が社がこんな巨大市場の中心にいるのは初めてのことです」。カリフォルニア州サンタクララのエヌビディア本社前で話すのは、トレードマークである全身黒ずくめの装い─黒い革靴、デニム、ポロシャツにレザージャケットに身を包んだフアンだ。「ひとえにGPUという、絶対的な強みを持っているからです」。
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翻訳=徳田令子(アシーマ)、編集=飛松紅葉

この記事は 「Forbes JAPAN No.33 2017年4月号(2017/02/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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