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2017.04.07 18:45

中国から見るトランプ時代 「我々も歴史には学んでいる」


 より厳しい状況がドルである。1971年の金兌換停止以降、プラザ合意、アジア通貨危機、リーマン危機など、ほぼ10年ごとに発生した国際通貨問題は、磐石に思えた基軸通貨ドルのパワーを確実に減殺してきた。そのたびに、アメリカの政権は強いドルの復権を目指したが、長期トレンドでドルは確実に弱くなった。過去20年以上、米国債を中国と日本に大量に買ってもらいながら赤字補填をせざるをえない。
 
ベトナム戦争の泥沼にはまったころから、アメリカの軍事力、経済力、通貨パワーは衰えが露わになってきた。歴史上、危機を乗り切った大国は、冷静さに裏付けられた果敢な行動力と優れたバランス感覚を有し、何よりも自らの職務をノブリス・オブリジェと心得て国をまとめる人材を輩出したものである。ギリシャのペリクレス、宋代の王安石、大英帝国のウィリアム・テンプル然りだ。
 
彼らとは真逆に、トランプは国を分断し、いまやアメリカはDivided States of Americaだと嘆かれている。外交はケンカ腰で一方的な罵声を浴びせるばかり、ヨーロッパもアジアもトランプには反感しかもたなくなってきた。

『食在広州』は大袈裟ではない。同地の三大酒家に数えられる北園の名菜は、いずれもため息が出るほどに美味である。招待してくれた広東省社会科学院のメンバーたちの話題はトランプだ。

「まだ当地では正確な情報がありません。でも中国に敵対的なことだけは間違いなさそう」
 
だからこそ、日中の関係改善が喫緊の課題ではないかと、私はこう続けた。

「19世紀以降の酷い時代をつくってきた張本人が欧米であることを、少しは思い出したらどうですか」
 
大きな歴史の流れをみると、日清戦争以降の日中関係悪化を陰で画策していたのはアメリカだ、といえなくもない。門戸開放、機会均等を叫んだ、時の国務長官ジョン・ヘイを思い出す。

「確かに。でも中国は平気です。パクス・アメリカーナは50年間で終わる。間もなくだ。数年経ったら、必ずガツンとやりかえしますよ。我々も歴史には学んでいるつもりです」
 
そう言いながら、彼らは戦国時代の蘇秦や張儀たちの活躍ぶりに花を咲かせていった。

編集 = Forbes JAPAN 編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.33 2017年4月号(2017/02/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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