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社会の認識も変わってきました。ひと昔前は、ひとりの大物起業家が現れ、多くの雇用を生み出してくれることが期待されていた。中小企業の影響力など軽視していたのです。しかしいま、注目を集めているのはスモール・ビジネスです。規模は小さくても成長力を秘めた企業はたくさんある。そうした企業にわずかな情報や知識、資金さえ提供すれば大きな見返りがあると、社会そして政府もやっと気づいたのです。

一方、スキルセットという点でも大きく環境が変化しました。IT技術の発達によって、さまざまなツールが使えるようになった。情報の入手も格段に容易になりましたし、女性が家事をこなしながら自宅で起業するようなこともできる時代です。

─世界を変えるゲーム・チェンジャーになるための重要なポイントを3つ挙げてください。

質問の答えになるかどうかわかりませんが、バブソンでは極めてシンプルなアプローチを取っています。

学生に対してまず、「あなたは何者なのか?」「あなたは何ができるのか?」「誰があなたを助けてくれるのか?」という3つの質問を投げかけるのです。その答えを見つけることが、起業への第一歩につながっていく。起業家として成功するためには、まず第一歩を踏み出さなくてはなりませんからね。

最初から詳細なビジネスプランがあって、その通りに物事を進められる人など、私たちは求めていない。そんな人は逆に失敗することが目に見えています。それよりもまず、自分自身を理解することが大切なのです。そうすれば、必ず第一歩を踏み出すことができる。

─確かに、3つの質問なら誰でも見つかりそうです。

第一歩を踏み出すときの自信をもつことが重要です。さらに言えば、私たちは失敗することを前提に置き、学生に接しています。失敗を通じて学ぶことの大切さを教えているのです。

バブソンには、失敗についてオープンに語れる雰囲気があります。失敗を認め、それについてみなで話し合う。1年次に体験する起業でも、会社が利益を上げたかどうかで評価は決まりません。起業体験を通じ、何を学んだかが問われる。つまり、成功か失敗かよりも、学生が「何を学んだのか」ということを重視しているのです。アメリカでも、高校までは「正しい回答」をしたかどうかで学生の成績が決まります。しかしバブソンでは、きちんと学んでいるかどうかで評価する。

─「失敗」こそが重要だということですか。

失敗は人生の一部ですからね。ポジティブに受け止め、将来に生かしていくことこそ大切なのです。

失敗の重要性は、起業家に限らず言えることです。私自身にも、政治家として選挙に敗れた経験が何度もあります。だけど落選を経てよりよい候補者、政治家になれたと確信している。バブソンの創設者であるロジャー・バブソンは「成功も失敗も永遠のものではない」という言葉を残していますが、まさにその通りだと思います。


ケリー・ヒーリー◎バブソン大学学長。ダブリン大学トリニティ・カレッジ政治法学博士号取得。30年近くに渡る米国及び国外での研究機関、政府機関、人道支援の活動で知られる。2003年〜07年、第70代マサチューセッツ州知事ミット・ロムニーの元で州副知事を務める。バブソン大学は、同州ウェルズリー市に1919年に起業家ロジャー・バブソンによって設立されたビジネス専攻に特化した教育機関。13年より、女性初の学長を務める。

構成=出井康博

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