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「初めてこの会社に出資したとき、自分がまさか自動車産業の決算報告に耳を傾けることになるとは思わなかった」と、ウーバーの最初期の出資者でもあるベンチャー投資家のビル・ガーリーは言う。

「ウーバーが自動車産業という地球上で最大級の産業をどう変えるか。考えるだけで、とてもワクワクするね」

規模が拡大するにつれて、効率至上主義もさらに強化。カラニックは「すべての要素を解決すべき問題へと分解する」という一貫したスタンスで、事業に臨む。

「コードとプロセスで、ひとつのシステムを創造するんだ。我々が生きているのはビットと原子の世界。つまりはプロセスとコードでできている。率直にいえば、それがすべての問題の正体なんだよ」

カラニックは一度そう言ってから訂正した。「プロセスとコードと、人間だ」

もはや当たり前となった「ボタンひとつでクルマを呼ぶこと」を実現するには、完璧に調和した“無数のコード”が必要だ。プロセスとコードを分析する日々のジャムで誕生したサービスは1000件以上。そうした技術の断片をウーバーという巨大な組織が包み込んでいる。微調整の総和が、大きな成果を生み出しているのだ。

ウーバーには、新たなシステムや技術への投資を考慮するための指標がある。

「まず我々のビジネスを脅かす可能性のあるものに対して、全力を注ぎます。もし選択と集中がうまくできないなら、そもそもビジネスを展開しません」と、CTOのスアン・ファムは言う。アナリティクス、ルート決定やデータセンターの技術など、検討事項は無数にある。その中で、最も注目に値し、最も利益を生み出しそうな項目が、自動運転であった。

2年前、カラニックはグーグルからブライアン・マクレンドンを引き抜いた。ブライアンはグーグルアースの共同開発者で、グーグルの「マッピング(地図化)」事業を長年指揮してきた人物。自動運転車の開発に不可欠で、ライドシェア事業での「ドライバーと乗客の最良マッチング」を実現するマッピング技術こそ、ウーバーの未来を左右する技術だと、カラニックは確信していたのだった。

一度、集中投資するものが決まれば、次に便利な特色を打ち出すのがウーバー流。あとは得意の“永遠に続く反復作業”でサービスを急成長させていくのみだ。「3年半の間に配車システムを3回、書き換えました」と、ファムは振り返る。ウーバーでは現状の処理量の10倍まで対処できるシステムをつくったとしても、12〜18カ月後には廃棄しなければならないという。

自動運転時代を見据えた未来予想図

この地球の「輸送面でのOS」を目指すウーバーは、非常にハードな職場としても有名だ。だがカラニックの周囲の人間は、彼が次第に丸くなり、“焦土戦術”で邁進した日々からは脱却したという。強力な人材の獲得と安定した経営陣は、その徴候のひとつだ。

16年に取締役会に迎えられたアリアナ・ハフィントンは「トラビスは自社のチームに誰が必要かを考え抜き、その人を追いかけるの」と言う。その言葉通り、カラニックはターゲット社の経営再建の立役者ジェフ・ジョーンズにTEDの楽屋で偶然出くわすと、数日後に面会へ。結果、6カ月後には、ジェフはウーバーの取締役会の一員となっていた。

編集=山本隆太郎、翻訳=町田敦夫

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