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トラビス・カラニックは、人生の中で常に「パターン」を見つけ出し続けてきた。十代の頃には、大渋滞で有名な南カリフォルニアのフリーウェーの交通量を分析し、最適な走行レーンを発見。カリフォルニア大学ロサンゼルス校で受けたコンピュータ・サイエンスの教育も、最終的には退学したとはいえ、彼の問題解決型の思考様式を研ぎ澄ます役に立った。

在学中に起業したP2P(ピア・ツー・ピア)検索エンジン「スカウア」での失敗、P2P大容量ファイル配信サービス「レッド・スウッシュ」の売却を経て、カラニックは2009年にギャレット・キャンプとウーバーを創業。10年に高級車の予約の手間を省くアプリ「ウーバーキャブ」をスタートさせた。

提供を開始した当初、カラニックと友人たちがサンフランシスコをぶらつくときに使う“おもちゃ”程度だったウーバーを爆発的に成長させたのも、やはりカラニックの問題解決型の思考だった。

「料金が下がればより多くの乗客が関心をもち、より多くのドライバーが集まる。すると待ち時間が短くなり乗客がさらに増え、ドライバーの稼ぎも多くなる」

ウーバーには都市交通そのものを創造的に破壊するポテンシャルがあると早々に気づいたカラニックは、この好循環を“微調整”することに情熱を燃やした。

その結果、ウーバーはグーグルやフェイスブックをしのぐシリコンバレー史上最速の成長を実現。9000人以上の社員と150万人のドライバーを抱えるまでになった。いまやウーバーより多くの人々に給与を払う企業は、世界でもウォルマートとマクドナルドだけだ。

「輸送を水道水と同じくらい、信頼できる確実なものにすること」を現在の目標として掲げるカラニックは、「人をクルマに乗せること」には関心をもっていない。彼はウーバーを「移動性の中心」に位置づけ、物が移動する機会すべてにかかわるつもりでいるのだ。

「クルマの市場、輸送の市場、消費者の地上交通。それらは全世界で5兆ドルから6兆ドルの規模だ。でも正直言って、数字は大した問題じゃない。肝心なのは“数兆ドルの規模”だということだよ」

ウーバーはこの2年間でイーツ(食品配達)、ラッシュ(自転車による宅配)、フレイト(長距離輸送)のような配送サービスにも積極的に新規参入。特別なイベントがあれば、チョッパー(ヘリコプター)、シープレーン(水上飛行機)、ボートなどを繰り出し、話題を振りまいた。自動運転車や自動運転トラックにも多額の投資を行い、“空飛ぶクルマ”というイーロン・マスクばりの壮大な構想まで提案した。

こうした新規事業を足がかりに、ウーバーの中核であるライドシェア市場では、エックス、プール、ブラック、セレクト、モトなどあらゆるメニューを提供。その結果、16年の売り上げが優に50億ドルを超えるのに対し、損失はおよそ20億ドルに達する見通し。明日の市場支配が第一で、今日の利益は二の次─、ジェフ・ベゾス顔負けの低利益率戦略である。

編集=山本隆太郎、翻訳=町田敦夫

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