この約束は、トランプ政権が「権力分立制」を支持し、トランプ・オーガナイゼーションを政治とは切り離すことを明確に示そうとする試みだった。トランプはまた、弁護士を通じて次のように約束した。
「米政府当局者が外国政府から金銭を受け取ることを禁止した合衆国憲法の報酬条項に違反するのではないかとの疑いを拭い去るため、トランプ・ホテルを外国政府が利用した場合、その売り上げは全て財務省に寄付する」
しかし、就任から70日あまりが経過した現在、ビジネスと政府の「権力分立」は、好意的に見ても「曖昧」だ。息子の一人、エリックは3月下旬、同社の財務状況について今後も父親に随時報告する考えであることを認めた。さらに、トランプの長年の友人でありビジネス・パートナーでもあるフィル・ラフィンは、外国政府から得たホテルの売り上げを寄付するというトランプの約束を疑わしく思っていることを明らかにした。
エリックとラフィンから直接話を聞いたフォーブスの記者は、この問題について次のように語った。
─エリック・トランプは家業のビジネスについて、父親にどの程度を報告しているのか。
大統領はビジネスについて息子たちと話をすることはないと述べた。だが、エリックは実際のところ、父親にトランプ・オーガナイゼーションの財務状況について報告していることを認めた。どの程度の頻度で報告しているのかと尋ねたところ、「状況による」との答えだった。一体「何の」状況によるのだろうか。
─トランプ・オーガナイゼーションは外国政府から得たホテルの売り上げを寄付するつもりはあるのか。
トランプは2人の息子に経営権を譲ることに同意したときにすぐさま、財務省に寄付する考えを明らかにした。これは、政府の役人が外国政府から支払いを受け入れることを禁じた条項に違反すると問題視されることへの対応だった。だが、ラフィンはこれについて、こう答えた。
「何のことか私には分からない」「…彼らがそうすることはないだろう」
富裕層を優遇
一方、トランプは政策課題の一つとして税制改革を掲げている。これについて雑誌「フォーブス」の元編集者で、税や投資戦略に関する話題を専門に執筆活動を行うビル・ボールドウィンは、筆者の質問に対し次のように述べた。
─トランプの税制改革によって、富裕層はどれだけの減税を受けられるのか。
カリフォルニア州アザートン(高級住宅地)のような場所に住む富豪たち、平均でも8桁に上る資産を保有する同地区の「平均的な億万長者たち」にとっては、8万1000ドル(約905万円)の減税になる。