自転車シェアは世界各地で行われているが、レンタルした自転車は指定の返還場所に戻すのが普通だ。しかし、中国の自転車レンタルは街中に放置された自転車に気が向いた時に乗り、どこでも乗り捨て自由というスタイルをとっている。
サービスの普及の背景にはWeChatペイやアリペイを用いたモバイル決済の浸透と、各自転車にGPSが搭載されている事が挙げられる。利用者はMobikeやOfo等の自転車シェアアプリを立ち上げ、周囲に乗車可能な自転車があるかを調べる。自転車が見つかれば車体にプリントされたQRコードをスキャンして決済を行い、自転車のロックを解除して乗車する仕組みだ。
運営者側はバイクの位置をGPSで把握しているため、利用者はどこにでも自転車を乗り捨てていい。さらに、劇的な安さも魅力だ。30分間の乗車に払う料金は0.5元から1元(約16円)ほどとなっている。
北京の会社員の女性は「オフィスから家まで自転車で20分の距離に住んでいるが、自転車シェアサービスなら0.5元で通勤できる。電車に乗るよりもずっと安い」と述べた。
業界で最大勢力のMobike社の調査では、利用者の大半は1キロから3キロの距離を移動し、家から地下鉄の駅やオフィスまでの間に利用するケースが多いという。
上海本拠のオレンジの自転車で知られるMobikeは、今年1月に約2億ドルの資金をテンセントらから調達。その後、フォックスコンからも資金調達を行い、今年中に自転車数を1千万台まで増やすとしている。一方で黄色いカラーがトレードマークのOfoはシャオミや滴滴出行(ディディチューシン)らの支援を受け、先日は企業価値10億ドルで4億5000万ドル(約500億円)の資金を調達した。
しかし、乗り捨て自由の自転車シェアは消費者に愛される一方で、行政機関の頭痛のタネにもなりつつある。上海の当局は先日、路上に放置された4千台の自転車を撤去した。住民らが苦情を訴える事例も増えている。
上海の消費者局の担当者は「2016年の上半期に8件しか無かった苦情件数は、下半期には176件にまで増えた。さらに今年の3月までに460件の苦情が寄せられた」と述べている。
この結果、中国自転車協会はシェア業界を規制するための草案の策定に乗り出した。また、ほとんど利益を生まない自転車シェアのビジネスモデルが持続可能なのかという懸念も高まっている。
PwCが発表した調査結果によると、中国に約350社あるカーシェア企業も、ほとんどが赤字で事業の継続が危ういという。