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2017.03.31

トランプ政権が不安視する「FBIの盗聴」

首都ワシントンにあるFBI本部

3月20日、連邦議会はいつも以上の緊迫した空気が流れていた。下院の情報機関に関する委員会。証言を求められているのはFBIのジェームズ・コミー長官。長官自身も緊張していることがわかる。

議員の質問に答える形で長官は、FBIが2016年の大統領選挙でトランプ大統領の陣営の誰かがロシア政府と選挙戦に影響を与える動きをしていたか捜査を開始していることを明言。

ロシア政府が選挙戦で民主党本部にハッキングをかけたとされる問題をFBIが捜査していることはほぼ周知の事実だったが、トランプ大統領の陣営が捜査の対象となっていたことはこれまで明らかになっていなかった。

この日、FBIが合衆国大統領と全面的に対決する状況にあることが明らかになったのだ。

トランプ大統領陣営のロシア疑惑

トランプ大統領にとってロシア政府との関係は就任前からスキャンダルと言って良い状況になっていた。真偽が定まらないものの大統領の醜聞をロシアの情報機関が握っているとする報告書の存在、駐米ロシア大使と頻繁に会っていたことが明らかになり辞任に追い込まれたマイケル・フリン前国家安全保障担当補佐官。それ以外にも、当時の選挙陣営の数人がロシア大使と接触していることが明らかになっている。

実は、日本の警察関係者によると、フリン氏は昨年10月に来日した際も、「東京で駐日ロシア大使に会っているところが確認されている」と言う。

「トランプ大統領とロシアの関係は以前から疑われていて、大統領選中に選対本部長を辞任したポール・マナフォート氏は親ロシア派ウクライナ前大統領ヤヌコビッチ(現在、国際手配中)からコンサル料として約13億円を受け取り、パナマ文書にもその名前が出ていました。トランプ氏はまだ大統領候補だった選挙中、情報機関のブリーフィングの申し出を断るなど、情報機関嫌いです。そうしたことから、やましいことでも握られているのではないかと噂されていました」(同前)

情報機関嫌いという警察関係者の話は事実に近いかもしれないが、注意が必要だ。トランプ大統領はCIAに対してはあからさまに敵対的な姿勢を示したことがあるが、FBIに対しては、極力、融和的な姿勢を示してきた。そのFBIのトップが止むにやまれぬ状況とはいえ、自らに敵対する姿勢を公にしたのだから、大統領も内心おだやかではないだろう。

海外にも活動の場を広げるFBI

FBIの本部は首都ワシントンの中心部にある。実は今、その本部ビルを移転する計画が進んでいる。

現在の本部ビル(写真下)には5000人ほどが働いており、首都ワシントンの周辺にオフィスを分散させている状態だ。それを、広い土地に本部勤務職員全員(想定では1万1055人)が働ける規模の建物を建てるのだという。建設費は25億ドル、3000億円といったところだろうか。



FBIはFederal Bureau of Investigationの略だ。司法省の捜査局という位置づけになる。各州の権限が強く、警察組織が州ごとに異なる米国で、州をまたぐ捜査を行うために組織された。前身が財務省傘下の捜査機関だったことはあまり知られていない。例えば、マフィアの大物アルカポネを逮捕したことでしられるエリオット・ネスも財務省の職員だった。

それが広域捜査の必要性から司法省傘下でFBIとして設立され、徐々にその機能を強化していった。全米に捜査官を派遣している他、後述するように在外公館にも捜査官を派遣している。
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文=立岩陽一朗

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