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ジャーナリスト


自転車による台湾一周の経験もある一青さんは、PR大使任命の挨拶で「四国と台湾はどちらも山が真ん中にあってその周囲をぐるっと回ることができる地形も似ている。どちらも9〜10日ほどかけて一周する距離でもあり、気功や風土にも共通点が多い。両者をつなげる役割を果たしていきたい」と語った。

愛媛県とジャイアントが狙うのは、将来「環島(島一周)」というコンセプトを通して、双方のインバウント観光が刺激されあい、例えば、台湾を一周した人は、今度は四国一周に挑戦する、といった流れが出来上がることだ。

筆者も台湾については半周した経験があるが、10日間かけて一つの島を一周するというのは、毎日に100キロ以上走らなければならず、場所によってはきつい坂道や逆風にあって、つらさで投げ出したくなることもある。しかし、それを乗り越えて完走したときの喜びは格別のものがあり、何年かに一度はチャレンジしたくなるような「習慣性」を生む効果もある。

台湾では、もともと台北や高雄のある台湾西部に人口密集地が多く、台湾東部に対する台湾社会全体の理解は非常に薄かった。しかし、台湾一周を通して、自然や先住民の多様な文化に触れることができる東部の魅力が知れ渡り、台湾全体の観光振興にもプラスに働き、台湾社会の一体性が高まったとされる。

一方、四国も四つの県が、外から見れば一つに島に入っているように見えるが、四国全体の県同士の連携は競争意識もあってそれほど密接ではないようだ。お遍路という強力な観光資源はあるものの、四国大の観光コンテンツで国内外に一体となってアピールすることはなかった。

しかし、この四国一周という観光コンテンツが確立すれば、おのずとそのメリットは各県に共有され、共通の施設整備やエイドステーションの設置などに取り組まざるをえない。そうなれば、お遍路で示される四国の「おもてなし」の精神がサイクリングでも発揮される舞台が整う形になりそうだ。

"地域発"の観光のモデルケースに

自転車を通して、より大きな未来図が描けるところが、このサイクリングを通して地域振興という新しいスタイルの強みでもある。

愛媛県の成功例はいまほかの自治体を刺激しており、滋賀県が最近、琵琶湖一周コース「ビワイチ」を打ち出し、ジャイアントと協力しながら、コースの売り出しに熱中している。滋賀県の知事も今年の5月には台湾を自転車で走ることにしているなど、こちらもやはりトップセール方式で台湾と琵琶湖をつなぐことに懸命だ。ほかにも、東日本大震災の被災地である宮城県などが海岸線で新たに整備された堤防を利用したサイクリングルートの開発に取り組んでいる。

愛媛県には、この1年で外部から10以上の自治体や団体からの視察が殺到しており、いまやサイクルツーリズムによる地域振興は、中央政府を経由しない「地方」と「外国」の直取引方式の最先端となっているのである。

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四国一周PRツアーのチームで、香川県の浜田恵造知事(中央)を訪問。右は、一周コースをデザインしたサイクリストの門田基志さん(一青さん提供)

観光とは、本来、民間の自然な好奇心が動かすものであるが、人口減少が著しく、国際的にも観光地間の競争が激しくなっている昨今、「有名な観光地がある」ことにあぐらをかいて何もしないでいては、この競争に乗り遅れてしまう。

一つの観光コンテンツを国内外に売り出すにあたっては、行政、民間、企業の三位一体の取り組みが求められる。同時に、むしろ地域が率先して海外の観光客を呼び込む努力を重ね、一定の実績を示せば、中央政府のサポートを呼び込み易くなるはずである。その意味で、四国と台湾の自転車によるサイクルツーリズムは、一つのモデルケースになりうるものである。

文=野嶋 剛

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