ただ、この「税金以外の負担」を積極的に展開している国々もある。代表的なのは米国だ。災害や選挙など、多額の資金が必要に事態が発生すると、「ドネーション」の名の下に募金活動があちらでもこちらでも展開され、市民は積極的にこれに応じる。
これについては、米国生活が長い知人が「米国は伝統的に、国の支配を嫌うから。税金はなるべく少なくするにこしたことはないから、代わりにドネーションで、ということではないか」と語ってくれたことがある。
確かに、お上がふんぞり返って、強制的に協力を求める北朝鮮や韓国の場合であれば、気分も悪いし、「国でやれ」ということになるが、「これも国からとやかく言われないため」ということなら、協力するのも悪くない気がする。
では、トランプ新政権はどうなのだろうか。世界の名だたる大企業CEOらと相次いで会い、投資してくれるという人を激賞する姿を見ていると、形を変えた「ドネーション」の強制のように見える。
たとえば、米国に5兆円規模の投資を行うとしたソフトバンクグループの孫正義社長に謝意を示す一方で、メキシコへの工場建設を計画するトヨタ自動車をツイッターで「米国内に工場を建てるか高い国境税を払うかだ」と論評。トヨタは今後5年で米国に100億ドル(約1.1兆円)を投資する計画を表明したが、トランプ氏は3月15日、米ミシガン州での会合で、トヨタに対して米国に新工場を建設するよう改めて求めている。
今のところは「企業が利益をあげたいのであれば、米国に投資してほしい」という趣旨の発言にとどまっており、具体的に投資を強要しているわけではない。発言も公開の席で行っている。
だが、乱暴な発言の数々をみていると、いつトランプ氏が朴槿恵氏や金正恩氏のように豹変するのではないかという思いにもかられる。米国の政治経済的影響力は、南北朝鮮の比ではないだけに、なおさら「踏み絵」の恐怖も大きいだろう。
トランプ氏が本当に「米国ファースト」を達成したいのであれば、米国に協力することが、各国政府や企業の自由や繁栄につながる道であるということを、まず証明する必要があるのではないだろうか。