ビジネス

2017.03.27

世界最大の起業家支援団体「エンデバー」の全貌

マレーシア・クアラルンプールで開催された第69回のエンデバー国際起業家選考会の様子


「世界基準で成功した人から専門分野、例えば戦略やマーケティング、販売チャネルについてのメンタリングがあったのは、世界展開するにあたり目線を上げることにつながった」(杉江)

「エンデバー・アントレプレナー」の選考には16年、世界中で1万人以上の起業家が参加。世界27拠点でのレビュー、国内選考会に合格した232人が国際選考会(年6回)へと足を運び、199人が選考された、合格率2%弱という狭き門。しかも国際選考会では、面接官の全会一致での「合格」の票が必要となる。杉江は今回、見事、エンデバー・アントレプレナーに選出された。

「想像以上だった」―。そう語るのは、パネリストとして参加したMistletoe社長兼CEOの孫泰蔵だ。「日本のスタートアップが世界へと羽ばたき、世界の様々な課題解決に貢献することを応援したい」という想いから、17年3月より本格始動するエンデバー・ジャパンのボードメンバーとなった。世界の多くの起業家や投資家と面識があり、世界中の起業家イベントにも赴いている孫が、改めてエデバーの非営利団体ならではの“ネットワークの質”に驚かされた。

「世界中のエンデバーから選抜された起業家の話を聞くのはもちろんいい。加えて、遠路はるばる若い起業家とエコシステムを応援したいという“情熱”を持ったパネリストが集う。投資とは違う視点や価値観があるのが特徴だ。多様なバックグラウンドを持つ熱意ある世界中の人たちと、世界の最新のアジェンダについて深く話せる有意義な機会でもある。パネリストにとっても、気付きや学びが大きかった」

さらなるエコシステム拡大を目指す

「まるで世界展開に挑む起業家の応援団だ」と孫が指摘するように、エンデバーは起業家選出の先に、グローバル・ネットワークを活かしたメンタリングやタレント育成、資金調達援助という支援体制を持つ。とくに「成長するスタートアップの陰に成功している起業家などの優れたメンターがいる」という点を重視。選出した起業家には、複数のメンターからなるアドバイザリーボードを付ける。

前述のリード・ホフマンをはじめ、エアアジア創業者のトニー・フェルナンデスらといったグローバルボードメンバーをはじめ、世界中の経験豊富な起業家や企業の重役を担ってきた世界各国のボードメンバー(世界500人)やメンター(世界3000人)をつなぎ、メンターシップの場を作ってきた。ある年には「エンデバー・アントレプレナー」企業の平均成長率が、年60%以上も向上したという。

また、パートナーシップを結ぶハーバード・ビジネス・スクール、スタンフォード・ビジネス・スクールなどトップビジネススクールによるリーダーシッププログラムの提供も起業家の育成につなげている。

資金調達支援でも、50以上のVCと連携した投資家ネットワークへのアクセスをはじめ、VC出身のメンターによる資金調達やピッチに関するアドバイス、起業家の必要に応じてエンデバーVC部門「エンデバー・カタリスト」による投資も行われる。

エンデバーは、20年を見据えて、さらに大きな目標を打ち出している。1) 2億ドルのエンデバー・カタリストのポートフォリオゲイン、2) 20億ドルのエンデバー・アントレプレナーの総資金調達額、3) 20の起業家エコシステムの創出、4) 200億ドルのエンデバー・アントレプレナーによる収益、5) 200万人の雇用創出―だ。新たな起業家ムーブメントは世界に広がり続けている。
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文=山本智之

この記事は 「Forbes JAPAN No.34 2017年5月号(2017/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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