超音速旅客機は実現可能なテクノロジーだ。必要なのは各所に散らばった技術を一つにまとめ上げることだ。ブーム社のエンジニアらは現代の航空機業界が持つ先進的技術をフル動員し、カーボン繊維の機体やエアロダイナミクス技術を投入して超音速飛行を実現する。
さらに、コンピュータによるシミュレーションも設計やエンジニアリングの過程に劇的な向上をもたらすとSchollは言う。
「かつての航空機開発の現場では風洞実験トンネルの中でテストが繰り返され、一つの実験に半年もの時間を要していた。しかし、現代ではこの種のテストは30分で実行可能でクラウドで結果をシェアできる。ブーム社はこれまでに数千回の風洞実験に相当するテストを積み重ねてきた」
既存のテクノロジーに先進技術を適用し、野心的なイノベーションを実現する手法はイーロン・マスクの試みにも重なる。「スペースXがロケット分野にもたらした革命を、商用旅客機の分野で実現したい」とSchollは言う。
Schollの抱く野心はブーム社に多くの優秀なエンジニアたちを呼び寄せた。「スペースXでファルコン9ロケットを開発したメンバーもうちに来た。今よりも少し良い飛行機を作りたいという人は、ボーイング社に転職すればいい。でも、このチームで働けば、自分の孫たちにも自慢できる飛行機の製造に関われるんだ」