国内経済が減速する中で中国企業らは海外投資を活性化させ、政府は昨年末から海外投資の取り締まりを始めた。政府は元の外貨への両替に制限を加えたほか、500万ドル以上の海外投資に追加調査を課すなどの規制措置を導入した。
この措置は一部の中国企業に打撃を与えている。不動産デベロッパーの碧桂園は、マレーシアの400億ドル(約4兆5000億円)規模の住宅建設プロジェクト「フォレスト・シティー」のために設置していたショールームを閉鎖した。
ビリオネアのワン・ジエンリン(王健林)が経営するワンダ・グループ(大連万達集団)も「ゴールデン・グローブ賞」等の権利を保有する米テレビ番組制作会社ディック・クラーク・プロダクションを10億ドルで買収する準備を進めていたが、最近中止された。アナリストは、中止の理由を「ワンダが必要な外貨枠を確保できなかったからだ」と指摘している。
調査会社ディールロジック(Dealogic)によると、今年の第1四半期に却下された中国企業の対外投資案件は27件、総額160億ドル(約1兆8000億円)に上る。同期間に中国は121件、250億ドル(約28兆円)の対外投資を発表したが、このペースは前年同期(794件、2260億ドル)から大きく減速している。
中国政府が企業によるスポーツやメディア部門の海外買収をこれ以上望んでいないのは明らかだ。中国人民銀行総裁のジョウ・シャオチュアン(周小川)は記者会見で、これらの投資を名指しし「中国にほとんど恩恵をもたらさない」と批判した。
一方、中国の資本統制は海外展開を妨害していると、経営者たちからは強い反発も起きている。ブルームバーグは中信資本(CITIC Capital)CEOのジャン・イーチェン(張懿宸)の「このままでは元資金は投資されることなく、弱体化するだけだ」との批判を報道した。
しかし、バイオテクノロジーやロボティクス、半導体など戦略的に重要と判断されたセクターの取引は、引き続き承認される可能性がある。中国化工集団が、農薬企業大手のシンジェンタを430億ドル(約4兆8000億円)で買収した案件はその好例だ。
コンサルティング企業NSBOポリシーリサーチ(北京)の代表、ジョナス・ショートは「シンジェンタの取引のような、世界的に競争力を持つ企業を育てるという中国の目的にかなう投資はストップをかけられる可能性が少ない」と述べた。