biotope代表取締役


そう思っていた時に、IBMが新たなデザインプログラムをはじめると聞き、感動しました。当時、P&GやGEなどの例外をのぞいて、大企業がデザイン思考を用いることが珍しかったため、とても興味深く、驚きました。米IBMの大胆な投資と決意に感心し、私もキャリアに大きな変化を求めていたため「これだ!」と決めました。

佐宗 : そうして入社したIBMですが、どのような印象を持ちましたか。働き方や文化、何もかもが今までと違ったかと思いますが。

パウエル: 当時、IBMは、とてもエンジニアリング主導で、一世代前のために作られた伝統的なテクノロジー企業という印象でした。そして、巨大だった(笑)。それもそのはずです。一世代前には、そのようにビジネスが行われていたのですから。しかし、世界もテクノロジーも、急速にかつ大きく変化しており、情報にアクセスする方法も、私たちの働き方も大きく変わっています。

IBMもその新しい働き方に移行する必要があり、2013年はまさにそうした新しい働き方に向けての“はじまり”の一年でした。アジャイルで、クリエイティブで、レスポンシブな企業への変貌の第一歩とも言えるでしょう。

佐宗 : IBMに入社してから、まず最初に何から取り組みを始めたのですか?

パウエル : 新たに雇用したデザイナー向けのブートキャンプ・プログラムをつくっていました。3年で1000人近くのデザイナーを雇用しましたが、採用後、彼らにノートパソコンだけ渡して、チームの席に座らせて、「貢献しろ」というのは無理があると気付いたからです。

IBMは巨大かつ複雑な組織で、製品のテクノロジーも複雑です。デザイナーが入社後、それぞれのチームに入る前に“橋”をかけるようなサポートを行う必要がありました。現在、新たなデザイナーに対して3カ月のブートキャンプ・プログラムを実施していますが、私は、その設計と運営、管理を行いました。

また、このデザイナー向けのプログラムを実施していく中で、IBM全社員に対しても、デザイン及びデザイン思考について教育を行い、会社を変化させないといけないことがわかりました。なぜなら、全社員も、企業としてどのような方向に変化していくのかを知る必要がありますから。

そこで一人でも多くのIBM社員がデザイン及びデザイン思考を体験し理解するための教育プログラムをつくりました。デザイナー向けから全社員向けに、私の役割はここ数年でこうした変化を遂げてきました。

佐宗 : 特に気になったのは、コンサルタントやエンジニアといったノンデザイナーの社員コンサルタントとデザイナーの社員との文化や考え方の違いです。うまくコミュニケーションをとるためにどのような工夫をしたのでしょうか。

パウエル: デザイナーがノンデザイナーといいコミュニケーションをとるためには、ノンデザイナーにデザインの体験をさせることが最良の方法だと我々は思っています。なかでも、デザイナーの発想法を論理化し創造的にビジネス課題を解決する「デザイン思考」の取り組みは、とくによい方法だと思います。

デザイン思考は、デザイナーがプロセスを導き、コーチングを行い、ファシリテーションした時に、最も威力を発揮します。問題解決のための最適な環境が整うからです。新しいデザイナーには、デザイン思考アクティビティを“引っ張る力”も必要となるため、デザイナー向けに「デザイン思考の教師」となれるよう、多くのファシリテータートレーニングも行います。

ノンデザイナーには、デザインについて話すのではなく、体験してもらうこと。それがデザイン思考の価値をわかってもらうための説得材料にもなります。

文=佐宗邦威

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