機械は本当に人の仕事を奪うのか? 「雇用なき景気回復」をめぐる誤解

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ロボットの出現

論文では、まだ産業用ロボットが普及していなかった1980年代にまでさかのぼって、ロボットで代替可能とみられる産業での雇用状況を分析した。

すると、全ての国において、自動化の影響を受けやすい産業もそうでない産業も等しく雇用なき景気回復が起きていたことが分かった。

さらに、大学の学位を持たないミドルスキルワーカー(中程度の技能を持った人材)が不景気によってより大きな影響を受けたかを調べた。ミドルスキルワーカーが行う仕事の多くはルーティンワークを伴うため自動化しやすい。

しかし結果として、どの先進国においても、近年の景気回復の中でミドルスキルワーカーの雇用率は低下していなかった。つまり、テクノロジーの発達によってミドルスキルワーカーの雇用が脅かされるという主張には何の根拠もないことになる。

テクノロジーを恐れるな

人々の経済が圧迫される原因はテクノロジーや自動化にある、と決めつける風潮が最近強まっている。だが、雇用なき景気回復を引き起こしているのはテクノロジーではない。

論文では、雇用率が上がらないのは失業対策の政策による部分がより大きいのではという仮説を立てている。そうだとすれば、労働市場が柔軟な欧州での雇用が米国と比べ大幅な回復をみせていることも説明ができる。

今後の課題は多いが、正しい方向を見て問題に取り組むことが重要だ。今回の論文によって、テクノロジーは恐れるべきものであるという誤解がなくなり、人々が望む社会を実現すると同時に、全ての人が職に就けるような労働市場を作り出していくための一助になればと願う。

編集=遠藤宗生

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