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2017.03.21

テスラがようやく韓国に店舗開設 テスト走行は6ヶ月の予約待ち

(Photo by Bill Pugliano/Getty Images)

米テスラは韓国で初めてのショールームを2ヶ所オープンした。国民はテスラの上陸を熱狂的に受け入れ、テスト走行の予約は既に6ヶ月待ちの状況となっている。

テスラは3月15日の河南市の「スターフィールド河南」内の店舗に続き、17日にはソウルの清潭洞(チョンダムドン)にテスラストアを開店した。テスラの韓国進出はニュージーランドやアラブ首長国連邦(UAE)に続くものだ。

テスラが韓国で販売するのは、高級セダンモデルの「90D」のみで、この車種は既に世界で10万台が販売された。各ショールームでのテスト走行枠は一日10回に限定されており、待ちきれずに購入に踏み切るユーザーも多い。90Dは注文から3ヶ月でカリフォルニアの製造工場から出荷される。

ショールームのオープンに合わせ店舗やオンラインで注文を行った現地ユーザーが既に何人かいる模様だ。顧客らは一度もテスト走行を行わずに10万7000ドル(約1200万円)を支払い、6月の納車を楽しみに待っている。しかし、90Dの高価さに尻込みする顧客も多く、より低価格な車両の発売を待っている顧客らも多い。

テスラは2014年に既に中国と日本に進出。やや遅れて韓国市場に乗り込み、ヒュンダイのIONIQやBMWのi3、シボレーのBolt、ルノーサムスンのSM3 Z.E.といったEVに対抗することになった。

テスラの韓国進出が遅れた背景には政府の法整備やインフラ整備の遅延にあるが、ここ数年でこの分野への政府の投資は活発化し、充電設備はソウルには294ヶ所、韓国全土では2526ヶ所にのぼっている。また、韓国政府は2億3400万ドルを投じ、EVの国内普及台数を今年中に1万4000台にする計画を明かしている。リゾート地として知られるチェジュ島でも既に322ヶ所の充電設備が運営されている。

現時点で、韓国で販売が許されているのは90Dモデルのみだが、テスラは他の車両の許可申請も既に行っている。また、今年中にソウル市内に2ヶ所の急速充電所をオープンし、そこではスマートフォンを充電するのと同程度の時間でフル充電が可能になる。90Dはフル充電状態で378キロの走行が可能で、これはソウルから釜山までに一気に走行するにも十分な距離だ。

難点は「政府の補助金が出ない」こと

ただし、テスラが韓国で市場を拡大するためには課題も残されている。ショールームを訪れていた現地顧客の一人は次のように述べた。

「テスラは他のEVより走行距離が長い。しかし、テスラの購入には政府の補助金が受けられないのが残念だ」

韓国政府はEVの購入者に対し、1万2400ドルの補助金を与えており、地域によってその額は上回る。しかし、90Dに関しては補助金が出ないことをテスラ側も韓国の環境省も認めている。

韓国のEV補助金の対象となる車両は限られており、ルノーサムスンのSM3や、起亜自動車のソウル、日産のリーフやヒュンダイのIoniqのみだ。韓国は補助金の対象となる車両の条件の一つに、10時間以内にフル充電が可能なことを挙げているが90Dのフル充電には通常13時間が必要だ。

環境に対する意識が高まり、政府もこの分野への投資を活発化させる中で、EV市場の成長は期待されている。しかし、テスラの90Dの価格はポルシェの高級車なみで、一般消費者にはなかなか手が出しにくい。それに対し、ヒュンダイやルノーサムスンのEVは3万3000ドル程度の価格となっている。

にもかかわらず、テスラが相次いで2ヶ所を韓国にオープンさせたことは、同社がこの市場に巨大な可能性を見出していることを示している。

編集=上田裕資

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