ハイウエストでテーパードのくるぶし丈で、膝部分には「斬新な方法で膝を見せる」ビニールが施されている。値段は100ドル(約1万1270円)未満とお手頃だ。きっと、膝をセクシーに見せる方法を模索していた人の声がトップショップに届いたのだろう。
この最新デザインは確実に人々の関心を集めており、ノードストロームのウェブサイトに寄せられた商品レビューの中には、「これを履いてクラブに出かけたら、みんなに褒められた」「私の膝はとても魅力的なのに、冬は寒くて出せなかった。この商品は完璧な解決策!」などと書かれている。
中には不満の声もある。「とても気に入ったけれど、返品せざるを得なかった。このデニムに合わせられるようなシャツがないから」ということだ。確かにそうだろう。
デザインの美学
では、ノードストロームは、どのような狙いでこのデニムを仕入れたのだろうか?
「いわゆる“穴あきデニム”の実用版となることを狙ったのではないか」と言うのは、ブランディング&トレンド分析のエキスパートであるレイチェル・ウェインガーテン。「あるいは、ハイウエストなど90年代のレトロなファッションを好む人々を狙っているのかもしれない。日本の“カワイイ”スタイルが好きな若者にも受けると考えたのだろう」と分析する。
雑誌アプリ、スタイル・プーバーズ創業者のナイマ・ターナーフレミングの見方は違うようだ。スタイリングのエキスパートでもある彼女は、「初めてこのジーンズを見たとき、流行に敏感なトップショップのターゲット層(18~35歳)向けだと思った」と語る。
「これは80年代のデニムトレンドを現代的に解釈したデザインだ。膝のクリアパッチは、2017年春のトレンドでもあるシースルー素材とも合致する。ロエベやクリストファー・ケインなどの有名ブランドのショーでも使われていた」
ただ彼女は、どんなトレンドも、万人に受け入れられるわけではないと認ている。「このデニムは流行に敏感なミレニアル世代や、ファッションに敏感なママ向けの商品だ。オーソドックスなスタイルやクラシックなデザインを好む人々向けではない。このデニムのコンセプトは、同社のターゲット層でない人々には理解されないだろう」
スタイリングに関する情報を発信するフォーカスオンスタイル・ドットコムのシャロン・ヘイバーは、「シックなデザインではない。膝のビニール部分に汗もたまりそうだし、あくまで、若者が楽しんで身に着けることを目的としたデザインだ」としつつも「しかし、斬新で奇抜なものを身に着けたがる人々の市場は、確実に存在する」と指摘している。
ママ市場の反応は
育児関連の著書を発表しているジェン・シンガーは、このデニムについてこう話している。
「膝をついておむつを替えたり、ベビーカーを動かしたり、靴紐を結んだりするときに、穴があいたデニムではとても不便だ。トップショップのデニムは、こういった悩みを解決してくれるだろう。子どものお迎えに行った時に笑いの種にもなるけれど」
結局このジーンズは、流行を先取りしたスタイルなのだろうか? ウェインガーテンは、こう結論づけている。「こんな醜い流行に乗ってはならない」