米国のアマゾンは、2014年以降インドへの投資を加速させており、今後さらに30億ドルを投じることを明らかにしている。一方、東南アジアにおいては、アリババが現地のEC企業を次々と傘下に収めて優位に立っている。東南アジアは、人口が10億人に迫る勢いで増え続けている巨大市場だが、アマゾンはこれまで参入機会をうかがっていた。
そして先週、アマゾンはついにシンガポールでアマゾンプライムをリリースし、インドネシアでは倉庫をオープンした。業界関係者は戦々恐々としているが、アリババが既にアマゾン包囲網を固めており、遅きに失した感は否めない。
アリババは東南アジア進出に当たりフィンテック企業に出資を行いながら、昨年後半には傘下のLazadaが、シンガポールの食料雑貨EC、RedMartを買収し、ECエコシステムを構築している。アリババ会長のジャック・マーは、マレーシア政府のデジタル経済アドバイザーを務めており、同社は東南アジアにおけるリーダーへの道を確実に歩んでいる。
中国の習近平国家主席は、今年のダボス会議で経済のグローバル化を国家戦略に掲げており、アリババはその先兵としの役割を果たしている。中国の海外投資に関しては、アフリカに注目が集まりがちだが、東南アジアの重要性の方がはるかに高い。中国人の海外移住者5000万人のうち、3270万人は東南アジアに分布しており、アリババにとって東南アジアは文化的親和性が高い。これは、アマゾンがヨーロッパで抵抗なく受け入れられた状況と似ている。
アジアでは「よそ者」のアマゾン
アリババとは対照的に、アマゾンは東南アジアやインドの消費者にとってよそ者のイメージが強く、そのことがサービスを普及させる上で障害となるだろう。また、アマゾンの高コストなビジネスモデルや、ユーザーにエコーやキンドルなどのガジェットを提供する手法は東南アジア市場には適していない。これに対し、アリババは傘下に収めた現地企業を通じた事業展開を行っており、幅広い層に受け入れられる可能性が高い。
当面、アマゾンがアジアにおいてインドを最重視することはうなずける。インドは中国に次ぐ巨大市場であり、中国はアリババとJD.com(京東商城)がアマゾンの参入を阻んでいるからだ。同社が東南アジアをどの程度重視しているかは不明だが、この地域での敗北は中東や東ヨーロッパにおける覇権争いにも影響を及ぼすことが予想される。また、東南アジア攻略に必要な資金は、インドへの投資額を上回る公算が高い。アマゾンにとっての課題は、それだけの資金を投下しても、アリババの後塵を拝す可能性が高いことだ。