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さらに政治的リスクも顕在化した。1) 中国であげた利益の海外送金が難しい、2) 100%子会社の設立が難しい、3) 一方、合弁事業からの撤退を決定した場合の清算には困難がともなう場合が多い。このような評判が広がり、外国企業も中国への追加投資を控えるようになってきた。

日本企業も追加投資はベトナムやミャンマーへ行くケースが増えてきた。このような「チャイナ・プラス・ワン」戦略が顕著になったのは、13年以降である。このように外国からの投資にかげりがみえるようになっていた。

さらに人民元上昇を期待して、貿易取引の「リーズ・アンド・ラグズ(意図的に早めたり遅らせたりすること)」や一部の金融機関では可能である裁定取引を通じて、14年までは、資本が流入していた。おもに香港からの資本流入は続いていた。香港でも、人民元建ての預金の残高が積みあがっていた。ところが、14年後半からは、この流れが逆流し始めたのである。

8年前の水準まで人民元は減価

中国人民銀行の周小川総裁は09年、「中国人民元が国際通貨基金(IMF)の通貨単位である特別引き出し権(SDR)の構成通貨に入るべき」という論文を発表した。SDRの構成通貨は、その時点で、米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円の4通貨であった。IMFは、SDRの構成を5年に一度、見直すことにしてきている。

15年がこの見直しの年に当たっていたので、人民元がSDR構成通貨となる適格性を検討した。適格性の基準はおおきく分けて二つあり、第一は、その国の貿易額が大きいことで、中国はこの条件は問題なくクリアしていた。第二は、その通貨が自由に利用できること(freely usable)とされていた。

「自由に利用できる」とは、国際的な取引の建値として、また決済通貨として使われていること、またその通貨建ての債券が国際的に発行されていること、そして、その国以外の国の外貨準備に含まれていることであった。

スタッフによる検討のあと、幹部による検討、理事会の投票をへて、15年11月に、人民元のSDR構成通貨入りが決定された。そして16年10月1日から実施された。この意味で、15〜16年は「中国人民元の国際化」にとって重要な年であった。

しかし、皮肉なことに、SDR構成通貨入りが決まってから資本流出はむしろ深刻になり、中国政府はさまざまな資本規制強化をおこなった。それでも、人民元の減価も加速した。16年末の1ドル6.96元という水準は、08年の世界金融危機と同じであり、ほぼ8年前に逆戻りしたことになる。IMFとしても、せっかくSDRに迎え入れたものの、これほど、資本規制の強化や減価が起きたのは予想外だったかもしれない。

では、今後、資本流出とその結果である人民元の下落を止めることができるかどうかは、「中国経済が失速から立ち直れるか」「外国人投資家ばかりではなく、自国民の資産運用の受け皿となる金融商品が提供できるか」にかかっている。さらに、トランプ大統領の貿易政策も要注意である。資本流出をおそれて資本規制を強化すれば、外国人投資家はますます中国を敬遠することになる、という悪循環に陥るかもしれない。17年は、中国の通貨当局にとって“試練の1年”になりそうだ。

文=伊藤 隆敏

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