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消費経済:小売業とそれを改革する人々について執筆

nullplus / shutterstock.com

言うまでもないことだが、米国の企業社会は女性の活躍を想定して築かれていない。女性が男性の補佐以上の地位を獲得するようになったのは、ほんの一昔前だ。それまでは、女性は妊娠したり、太ったりしただけで解雇されてもおかしくない存在だった。

あらゆる業界で女性リーダーが躍進する現在においても、女性の平均収入は男性のそれの79%である。共和党が上下両院の過半数を占め続ける限り、男女の賃金格差が埋まる日は遠いだろう。共和党上院議員らはこの2年間で4度、賃金公正法(Paycheck Fairness Act)を否決してきた。

シリコンバレーやウォール街の男社会に進出できた女性たちも、無傷ではない。最近もウーバーとテスラの女性エンジニアが、それぞれ男性社員から受けたセクハラや性差別を告発して話題になった。

このように企業社会が女性労働者を公平に受け入れているとは言えない現状で、妊娠をめぐる受け入れ体制はさらに不十分だ。米国は世界の先進国のうち、有給の産休が保障されていない唯一の国なのである。

2015年頃から、マイクロソフトやツイッターなどのIT大手や、バンク・オブ・アメリカやアメリカン・エクスプレスといった金融大手を筆頭に、多くの企業で妊娠・出産する従業員に各種手当を支給する動きが相次いでいる。それでも国全体で見れば、出産した女性の25%が産後2週間後には職場復帰する。そして40%が第1子出産から1年以内に退職しているのだ。

そんな中、出産・育児支援サービスを行うスタートアップ「Lucy」が、225万ドル(約2億5500万円)のシードファンドを調達した。リードインベスターはForerunner VenturesとFelicis Ventures。

同社は2016年、テック業界でキャリアを積んだシャノン・スパンへイクと、産婦人科医のチトラ・アキレスワランがサンフランシスコのベイエリアで創業。出産前後の母親とそのパートナーに、助産師、育児コーチング、授乳や睡眠のサポート、資金計画の相談といった従来の医療制度がカバーしない分野のサービスを提供する。

Slack等の大手テック企業と契約

特に力を入れているのが、ミレニアル世代のワーキングマザーの職場復帰支援だ。この層はキャリアの中断を避けるために出産時期を遅らせる傾向が強い。「彼女たちは孤立しています。(旧世代と比べて)近親者が近くにおらず、同時期に出産する同世代も少ない」とスパンヘイクは言う。

一方、医療現場を見てきたアキレスワランは、母乳育児のサポートが責務だと話す。「母親は授乳ができるまでは仕事に戻れません。どちらを優先すべきか、という問題ではない」

Lucyのサービス対象者は、スマートフォンの専用アプリを使えるが、支援の多くは対面あるいはインターネットを通した一対一のセッションを通じて行われる。「今の世の中には、アプリ、本、ブログなどを通した情報は既に普及しています。私たちは実際に家を訪問します。それほど手厚いサポートが必要です」とスパンヘイクは語る。

Lucyが取引するクライアントは、サービスの対象である母親ではなく、その雇用主の企業だ。既にSlackやRedditなどの著名なIT企業と契約しており、金融や小売業からも関心が寄せられているという。企業の側は初期費用こそかかるが、ミレニアル世代の人材を失わずに済むため、長期的なメリットは大きい。スパンへイクとアキレスワランの二人は、企業で働く女性たちが30代を超えても出世し続けることを望んでいる。

「(女性労働者の数は)子供を産み育てる年代で急激に減少します。私たちは働く女性に辞めてほしくない。将来的にはリーダーになって欲しいのです」(スパンヘイク)

編集=海田恭子

 

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