米国のウェブを高速化する「衛星インターネット」企業の挑戦

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米国連邦通信委員会(FCC)によると、アメリカではおよそ4800万世帯でインターネットの速度が25Mbps以下だ。これはインターネットを導入している家庭の46%に当たり、アメリカでは多くの家庭で遅いインターネットが当たり前になっていると言える。高速インターネットに必要な回線の整備には時間と資金が必要になり、過疎地や条件の悪い地域ではさらに高額になってしまう。

それを変えようとしているのが、人工衛星を介したインターネットサービスの大手「Hughes Network Systems」だ。2016年12月に打ち上げた衛星EchoStar XIXは無事軌道に乗り、すべてのシステムが機能しているという。3月から提供する新サービスHughesNet Gen5では、この衛星を介してダウンロード速度25Mbps、アップロード速度3Mbpsを実現する。

同社がターゲットにするのはDSLやダイアルアップなど旧式のインターネット接続技術をいまだに使っている人々だ。

「大きな不満の原因の1つは低速なDSLです」と同社の副社長であるマイク・クックは言う。「DSLは銅線を用いた技術であり、電話会社はもはや力を入れていません。まだDSLを使っている人にとってHughesNet Gen5は大きなサービスの向上となります」

Hughes社のサービスではデータ容量の上限値に達した場合、サービスが完全に使えなくなるわけではなく、特定の時間帯に速度が落ちる仕様になっている。さらにピーク以外の時間帯に使える50GBの容量が毎月無料でプレゼントされる。

DSLや既存のインターネットサービスのユーザーにとってうれしいのは、新サービスではこれまで使えなかったHulu、ネットフリックス、アマゾンプライムなどのストリーミングサービスが観られるようになることだ。価格は個人ユーザーが月額49ドル99セント(約5660円)から、法人ユーザーは月額69ドル99セント(約7900円)からと、他社と比較すると魅力的な価格だ。

さらに新しい衛星を使って航空機内で高速インターネットが利用できるサービスJupiter AEROも発表された。「機内のインターネットの速度は地上に負けないものになる」と同社のポール・ガスク副社長は声明の中で述べた。機内で高速インターネットサービスを提供するために、人工衛星企業のSESやタレスと提携することも発表されている。

クックは衛星によるインターネット接続が今後数年で既存のインターネット接続に近づくと考えている。「新たな衛星を打ち上げたことは、衛星インターネット接続の分野で大きな進歩です。チャンスが広がるとみています」

編集=上田裕資

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