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2017.03.17

東欧と西欧の賃金格差を悪用か、イケア運転手の窮状が明らかに

EQRoy / Shutterstock.com

英BBCが先ごろ行った取材で、家具大手イケアのサプライチェーンで働く東欧出身のドライバーたちが、物価の高い西欧・北欧諸国で低賃金で働かされている実態が明らかになった。

トラックのドライバーたちはイケアではなく、その下請け業者で働いている。西欧で働いているにもかかわらず東欧の低水準の賃金しか支払われていないため、苦しい生活を余儀なくされている。取材によれば、ドライバーたちは請負業者から支払われる賃金では居住費を支払うことができず、時には数か月も車中で暮らしているという。

また、彼らの収入は実際に働いている国の最低賃金を大幅に下回ることも判明した。BBCが話を聞いた一人、デンマークで働くルーマニア人ドライバーは、1か月の収入が477ユーロ(約5万8000円)だと語った。同国内で働くデンマーク人ドライバーの平均収入は、月2200ユーロ(約26万7000円)だ。

EUでは、母国の外で働くドライバーの賃金については、母国の水準ではなく実際に働いている国の水準を適用すべきと定めている。イケアは今回の疑惑を「極めて深刻に」受け止めているとコメントした。

賃金水準の低い東欧諸国から、デンマークのように世界で最も物価が高い部類に入る国に、賃金の補償なくドライバーを連れていき、働かせることはとても非倫理的な(そして法律違反すれすれの)行為だ。オランダでは2月に請負業者が訴追され、判事は従業員の労働条件が「非人道的」だと非難した。EUではドライバーについて、週45時間は車から離れて休憩を取らせるべきと指導している。

イケアは今回明らかになった実態について、そのほかの全ての人と同様に衝撃を受けているように見える。不適切な実践を行っていたのは、請負業者のようだ。

だがBBCのジャーナリストによれば、大量のトラックが集まる場所は「キャンプ場」のようになっており、それを見逃すというのは考えにくい。この場所は、イケアの配送ネットワークで最大規模のドルトムント配送センターの外側にあるのだ。ドライバーたちは、イケアの玄関先のすぐ外側で暮らしていた。

こうした運送業者を雇っている大手企業はイケアだけではない。残念なことにヨーロッパ全域で同様のことが行われている。東欧と西欧で賃金に大きな格差があることから、悪質な配送業者がそれを利用して利益を得たり、法の抜け穴をかいくぐることが可能なのだ。

今回の気の毒なエピソードからは、ヨーロッパの法執行機関の問題も見て取れる。どの法域(管轄区域)が法の執行を行うべきかが、不透明なのだ。仕事の一環として大量の労働者が日常的に国境を越えている場合、彼らにはどの国の法律が適用されるのだろうか?

雇用主に大きな責任があるのは明らかだ。イケアは良心ある企業だと自負している。先ごろ発表した持続可能性に関する報告書の中では「当社とサプライヤーの関係は共通の価値観に基づいており、互いの尊重、信頼と透明性の上に築かれている」と宣言していた。

数多くの複雑なサプライヤー関係を管理するのは難しい。中には管理しきれない部分が出てしまうのも確かだ。だがジャーナリストたちが取材に至るだけの十分な手がかりを見出すことができるなら、消費者も同じことができる可能性がある。

だからこそ各企業はジャーナリストたちと同じ考え方を持って、サプライチェーンにおける非倫理的な行いを排除していかなければならないのだ。

編集=森 美歩

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