しかしバーチ本人は、ブランドの創業について語った2004年のニューヨーク・タイムズの記事において「野心的」と評されることに不快感を示していた。
「昔も今も男性が野心的であることは称賛されるのに、女性が野心を持つと、はしたない、愚かといったマイナスイメージを持たれる」
1軒のショップから始まったブランド「トリー・バーチ」を年商10億ドル以上の大企業に成長させた現在、バーチは言う。国際女性デーの3月8日、バーチはambitiousという言葉の定義を変えるべく、「Embrace Ambition」(野心を抱こう)キャンペーンを立ち上げた。
女性が野心を持つことの大切さを説く公共広告には、多数のハリウッドスターの他、米「VOGUE」編集長のアナ・ウィンター、フェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグ、事業家で慈善家のメリンダ・ゲイツ、911の救助活動にあたった消防士のレジーナ・ウィルソン、脱北者で人権活動家のパク・ヨンミといった女性が登場。
さらに2013年に4大プロスポーツ現役選手として初めて同性愛をカムアウトした元バスケットボール選手のジェイソン・コリンズや、元グーグルCEOのエリック・シュミットら男性も出演し、女性へのエールをおくった。
「この対話には男性の参加が必要不可欠です」とバーチは話す。バーチはまた、すべてのジェンダーの人々に対し、トリー・バーチ財団(Tory Burch Foundation)のウェブサイト上で展開中の「Embrace Ambition」宣誓に署名するよう呼びかけている。女性自身が野心を尊重することだけでなく、野心的な女性を批判から守ることも重要だからだ。
「Embrace Ambition」キャンペーンで販売されるTシャツとブレスレットの利益は全額、トリー・バーチ財団の活動資金になる。女性起業家の支援団体である同財団は、バンク・オブ・アメリカと提携してスモールビジネスへの低金利の貸付などを行っている。
かつて否定していた「野心」を推進するバーチが次に取り組もうとしているのは、男女の賃金格差の是正だ。格差の存在を否定する人々について、バーチは「彼らは無知ゆえに事実を知らないのでしょう」と言う。
「事実は重要です。言葉も重要です。女性は素晴らしい資本であり、男女平等は経済と社会を変えます。そして男女平等は権利です。お情けや厚意でもらうものではなく、与えられて当然のものなのです」