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2017年は“クラウドの力”に注目が集まる一年になりそうだ。16年は企業とそのCIO(最高情報責任者)が、クラウドに移行すべきかを検討した年だった。17年は「クラウドサービスをいかに活用するか」が焦点になる。

IBMが最近実施した、18業界の経営層1,000人以上を対象にした調査では、ほぼすべての企業が、なんらかのクラウドサービスを導入していることが明らかになった。社内のシステムとクラウドが相互連携、あるいは完全に統合されているとの回答は78%に上り、12年の34%から大きく上昇した。また、業務処理量のほぼ半分に当たる45%は、引き続きオンプレミス(自社運用)で使用されることが見込まれている。

企業は、既存の社内システムとクラウドの統合によるメリットを享受し続けると同時に、不特定多数が共同で利用する「パブリック(共有型)・クラウド」でも新たな作業を行えるよう投資を増やしている。今後はクラウドのなかでも、企業が自社専用に構築した「プライベート(専有型)・クラウド」と「パブリック・クラウド」の中間に当たる「ハイブリッド・クラウド」が、イノベーションのプラットフォームになりつつあるのは明らかだ。

以上の状況を踏まえたうえで、17年に加速するであろうクラウド・コンピューティングの世界で見られる5つのトレンドを紹介する。

1)「コグニティブ(認知)・コンピューティング」活用がクラウドによって加速する

私たちの周りには膨大かつ増え続けるデータがあふれており、日々の生活や仕事において、データに頼る機会も格段に増えつつある。デジタル時代において明確に言えることは、データが私たちの理解力を超えるスピードで増殖し続けているということだ。

世界のデータの80%は基本的に“ダークデータ”である。つまり、コンピュータに集められ、保存されているが、人間には見えていないし、活用されていない。クラウドを通じて提供されるコグニティブ・システムは、そんな“ダークデータ”のベールを取り払う役割を果たす。

サーバー、ストレージ(外部記憶装置)、そしてソフトウェアは、ハイブリッド・クラウド上で稼動するように構築されつつある。そしてハイブリッド・クラウドは、自ら理解し、学び、推論できるコンピュータ・システムが実現するコグニティブ・ソリューションへと向かいつつある。17年、クラウドを通じて提供されるコグニティブ・ソリューションは、新たな体験を生み出し、金融サービスや小売業からヘルスケア、航空など、あらゆる産業に変革を起こすだろう。

2)ブロックチェーンはクラウドを通じてデジタル時代に信頼性をもたらす

この数年で最も目を見張る技術的進展は、企業や個人間の取引を仲介する、初めてのP2P(ピア・ツー・ピア)グローバル・プラットフォームである「ブロックチェーン」の出現だ。

ブロックチェーンは、高度な暗号化技術を使用した分散型取引の基盤(インフラ)で、デジタル時代において最も高い安全性と信頼性を確保したシステムだと言える。アクセス権は限定されたメンバーのみに与えられ、各メンバーは閲覧を許可された情報のみ見ることができる。

クラウド上でブロックチェーンを導入する企業や組織は増加傾向にあり、この傾向は17年も続くだろう。実際、グローバル・サプライチェーン(供給網)におけるブロックチェーンの使用によって、年間1,000億ドル以上の効率化が実現できるとの試算もある。この優れたシステムは、API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)やソリューションとして、クラウド上で幅広くアクセスでき、消費が可能なように構築されている。

3)サーバーレス・クラウド・コンピューティングはアプリ開発の複雑さとコストを取り除く

“サーバーレス・コンピューティング”と呼ばれる最近注目のテクノロジーは、物理サーバーも仮想サーバーも立てておく必要がなく、クラウド上で直接アプリのコードを実行することができるものだ。このテクノロジーは、規模を問わずあらゆる組織に決定的な競争優位をもたらし始めている。17年は開発時間やコスト削減のために、この技術を利用する企業がさらに増えるだろう。

4)安全 ーー クラウドは安全の番人になるだろう

私たちは16年、企業や政府、市民に負の影響を及ぼすサイバー・セキュリティーに関するニュースを頻繁に目にした。また、クラウドへの移行が増えてはいるものの、安全性への懸念は導入への大きな障害としてなお立ちはだかっている。脅威はまだ存在するが、主要クラウドプロバイダーは安全保護の構築において、非常に大きな進歩を遂げている。

17年、新しいコグニティブ能力の活用でクラウドのセキュリティー脆弱性の感知は強化され、クラウドの強みになるだろう。セキュリティー・インテリジェンスに組み込まれたコグニティブ・ソリューションは、単に答えを生み出すだけでなく、仮説や根拠に基づいた推論と推奨によってより良い意思決定に貢献する。結果として、コグニティブ・セキュリティーは現在のスキルギャップへの対処や、脅威への迅速な対応を可能にし、サイバー犯罪に取り組むコストと複雑性を引き下げるだろう。

5)クラウドの潜在力が組織文化の変革をもたらす

クラウドを採用する組織の増加に伴い、その移行過程では技術にとどまらない変革が求められるようになるだろう。開発者、スタートアップ、組織は、ユーザー体験を優先し、協業に価値を置き、自由に試み、とがったビジネスにフォーカスするといった“文化の変化”を受け入れなければならない。

17年にはイノベーションセンターやガレージのような、物理的な空間を作るIT企業が多く現れるだろう。そこは人材を引き寄せ、育成し、少人数のチームが新たな技術を学び、イノベーションに向けて協業するために集まる場所になる。
こうした中、クラウド・プラットフォームはイノベーションを加速し、ITの分野で企業や社会の変革において重要な役割を果たすだろう。

筆者:ダミオン・エレディア(IBM)
注:この記事はIBMクラウド戦略部門トップのダミオン・エレディア(Damion Heredia)の寄稿を基にForbes JAPAN編集部が執筆しました。

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