天然ダイヤモンドの業界は安定しており、業界大手デビアスの2016年の報告書によれば、2015年の世界的需要が790億ドル(約9兆円)規模だ。研究所で作られたダイヤはまだ初期段階(デビアスの報告書では消費者からの需要は「無視していいほどわずか」とされた)だが、その存在そのものが従来のダイヤ業界の存続を脅かしている。
“ラボ製”のダイヤがさまざまな意味で、ダイヤの価値を脅かすのではと懸念されているのだ。悪質な販売業者が天然ダイヤときちんと区別して売らないのではないか? 研究所で科学的に作られるとダイヤの持つロマンチックな意味合いが損なわれるのではないか? などという懸念だ。
だがストーフェンマッカーによれば、天然のダイヤがロマンチックというのは古い考えにすぎない。婚約する可能性が高い20代の女性は、ラボ製のダイヤを身に着けることにほとんど抵抗はないと彼女は言う。
自身もミレニアル世代である彼女は、婚約指輪の売り方についても独特な視点を持っている。従来のジュエリー会社とは違い、VOWは男性ではなく女性を重視している。指輪を決める前に試せる「お試しボックス」というものがあり、これを注文すると、模造品の指輪が3種類入った箱が自宅に届けられる。その中から1つを選び、1週間以内に返送すればいいのだ。
ちなみに、模造品の指輪は真ちゅうに金メッキを施した安価なつくりになっている。石はキュービックジルコニア(偽ダイヤ)。ラボ製のダイヤとはまったくの別物だ。