ビジネス

2017.03.18

X JAPAN・YOSHIKIが語る起業家とアーティストの共通点

X JAPAN YOSHIKI氏


──「今ここ」にフォーカスするというのは、「禅」の思想とも通じ、シリコンバレーの企業などでも人気の考え方ですよね。また、京セラ創業者の稲盛和夫氏も、「生きていることに感謝する」と言っています。一流のアーティストとビジネスパーソンには共通するところもあるのでは、と思うのですが、いかがですか?

YOSHIKI:やはり、成功者は「無謀」ですよね。安定した道を選ばず、どこかで無謀な判断をしているところだと思います。今回のドキュメンタリー映画『WE ARE X』にも登場するセールスフォース・ドットコム最高責任者のマーク・ベニオフは親友の1人ですが、彼もオラクルの幹部でエリート路線にいたのに、「これからはクラウドだ」ということで、ある意味ではラリー・エリソンに反旗を翻すような形で起業している。

彼とは頻繁に会うのですが、常に次のことを考えています。卓越したビジネスセンスと無謀さを兼ね備えながら、チャリティーにも積極的で。とても影響されています。

──YOSHIKIさんは「安定したい」と思ったことはありますか?

YOSHIKI:もちろんあります。でも、そういう道をどうしても選べなくて。だから、「誰が僕の人生の脚本をこんな風に書いたんだろう」と、辛くなることもあります。

でも、安定の基盤になるのがお金だとしたら、基本的にお金というのは、人と人のコミュニケーションの手段として生まれたものであるはずですよね。それに僕らが支配されちゃうのは違うんじゃないかと思っているんです。媒介するだけのものに、どうして執着する必要があるんだろう、と。僕たちの目標は多分、違うところにあるんですよ。

──それが自分の「使命」になるわけですね。

YOSHIKI:はい、それが何か、まだ明確な答えは出ていないのですが。

今は「弱みをさらけ出すこと」ができたのが強み

──最近はテクノロジーの進化により、「AIが作曲」なんてニュースが話題になることもあります。テクノロジーと人間はどのような関係を築くべきだと考えますか?

YOSHIKI:起業家のイーロン・マスク氏などは「AIを恐れている」と公言していますよね。音楽というのは、基本的に音の並べ替えなので、すべて計算できるんです。だから、ヒット曲のパターンを全部AIに学習させれば、新しいヒット曲が簡単に作れてしまう。だから、僕はよく「絶対にAIにできないこととは何か」、と考えます。

それはきっと、「無謀なことができる」ことではないでしょうか。「普通はこっちに行かないだろう」という方に思いきり振ることができるところ。あるいは、人間のだらしなさみたいなところもそうですね。今後はそれが、逆に人間の強みになるのではないかと思うわけです。

──YOSHIKIさんご自身の強みはどこにあると思いますか?

YOSHIKI:「弱みをさらけ出すこと」ができたのが強みかな、と。人というのは、不安であればあるほど着飾りますよね。今回、ドキュメンタリー映画で多くの実績を持つスティーヴン・キジャック監督の手腕により、僕はある意味で丸裸にされてしまったと思うんですね。それができたのは、自分で言うのは変ですけど、すごいことです。

だって、僕たちはビジュアル系なので、いかに着飾り、隙を見せずにイメージを作るか、ということをやってきたのに。でも、逆に言うと、自信がなければ出せなかったと思うんですよ。今、さまざまな経験をして、ありのままの自分を見せることができるようになったことは、自分でもうれしいです。

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──成功者は常に結果を出し続けることを期待されます。そのプレッシャーはどのように乗り越えてきましたか?

YOSHIKI:壁を壊そうとするとき、人間は思わぬパワーを発揮できます。X JAPANがデビューしたときも、当時は「4畳半ロック」というのが流行っていて、ロックミュージシャンはお金を持っていたらいけない、という風潮がありました。テレビ出演なんてもってのほか。だから、僕たちはバラエティー番組にも出演して、25歳のときにはロールスロイスを買って、乗り回しました。

そもそも、僕たちがロックの中にあったいろいろな決まりの逆へ逆へと向かって、既成概念を取り払っていった結果、生まれたのが「ビジュアル系」というジャンルだった。派手な格好をすることではなく、「自由に表現をする」ということが目的なんです。だから今の「ありのままの自分」も、ビジュアル系の到達点でもある。このように、常に壁があって、その壁を倒そうと思うと、いつでもその時点で最強であり続けなきゃいけない。だから、やはり諦めず、安定を求めず、挑戦し続けることだと思います。

文・構成=朽木誠一郎(ノオト) 写真=高橋健太郎

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