テクノロジーの導入で業界に革新を
「TRUEに所属するSNSインフルエンサーに対しても、彼らの目標や理念などを探す手伝いをしています。SNSに写真をアップしてお金を稼ぐだけでなく、より良い社会を作る声になることが重要です」。TRUEには、TRUE Careという慈善活動に特化した部署がある。収入の一部をチャリティーに寄付したいモデルと、寄付先をマッチングする部署だ。
「私が知る限り、モデル事務所としては初の試みだと思います。少なくとも大手はしていないはず」とノエルは言う。
そしてもう一つ、ノエルが変えようとしている業界の習慣が、洋服のサイズ表示だ。近年のアパレル業界では、ブランドが消費者の購買欲をくすぐるために実際よりも小さなサイズを表示する通称「ヴァニティ・サイジング(虚栄心サイジング)」が横行している。アメリカ人の平均ウエストサイズの増加に伴い、多くのブランドが各サイズのウエストを5センチ以上ずつ上げているのが現状だ。
この傾向を止めるため、ノエルは世界最大の国際標準化・規格設定期間ASTMインターナショナルと組み、ブランドに正しいサイズ表示を行うように働きかけている。「いいデザイナーはきちんと規定に沿ったサイズ感やフィット感の商品を作ります。そこで重要な役割を果たすのがフィッティングモデルです」とノエルは話す。
モデル事務所TRUEの躍進について、ノエルは「自分が正しいと思うことをしていたら、同じ志を持つ人たちが集まってきて、仕事が回り出しただけ」だと言う。ノエルは裁縫師の祖母とアパレル工場長の父の仕事を見て育ち、幼い頃からデザインや縫製の技術を身につけてきた。フィッティングモデルになったのは自然の流れと言える。自ら事務所を立ち上げたのは、得意先から同じ体型のモデル仲間の紹介を頼まれたことがきっかけだ。
TRUEは現在、ニューヨークを拠点に、ロサンゼルスと香港で展開する。チームメンバーは8人に増えた。ノエルの次の目標はテクノロジーの導入だ。「モデル業界にITが普及していないせいで業務の効率化が進まないことにずっと不満を持っていました。今、ソリューションを開発しているところです」