マネー

2017.03.13 10:00

世界トップを目指すベンチャーキャピタルの新たな挑戦

グローバル・ブレインの百合本安彦社長(前列中央左)と同社の投資先12社の経営陣。


世界各地のネットワークも着々と築いている。12年に米・サンフランシスコ、15年に韓国・ソウルとシンガポールへ事務所を設立、16年10月には韓国・ソウルに2拠点目を設立し、現在は東京を含めた5拠点で活動している。このうち、韓国においては日本のVCとして唯一、グーグルキャンパス内に事務所を構え、韓国ベンチャー企業の日本進出を支援している。
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一方、シンガポールでは、現地の政府、大学、VC、大企業、銀行、財閥とのネットワークを強化しており、ここから日本企業の東南アジア進出を支援していく。

「17年にはイスラエル、その後は欧州ベルリンでの拠点設立を計画しています。我々はグローバルVCという旗を掲げているので、一気通貫で見られる仕組みを築きたい」


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世界でも類を見ないハイブリッド型投資

GBは01年、ネットバブルがはじけた直後にVC事業を開始した。1号ファンドは森トラストの森章社長(現代表取締役会長)から10億円を預かる形で始まった。その後、森トラストの追加出資(2号)、ニフティ(3号)、SBI証券(4号)を経て、12年のKDDIとのCVCファンド、13年の産業革新機構からの純投資ファンド(5号)、三井不動産とのCVCファンドへとつながってきた。

最新の6号ファンドを含めた累計運用額は約600億円、CVCファンドと純投資ファンドの双方を手掛けるハイブリッドVCとして独自の道を歩んできた。

「米VCもやらない独自の手法だ。純粋にパフォーマンスだけを狙えば、良い会社に投資して、人材採用だけ支援すればいい。ただ手間はかかるが、誰もCVCとの両立を手掛けていなかった分、最終的には我々の大きな差別化要因になると考え、注力してきた」

KDDIとGBが火付け役となったCVCファンドだが、昨今の活況ぶりは第2次ブームと呼べる状況だが、CVCの第1次ブームは06年に遡る。GBがCVCに取り組み始め、大企業とのネットワーク構築を念頭にした「グローバル・ブレイン・アライアンス・フォーラム第1回」が開催されたのもその頃。この10年間、GBは大企業との関係性を地道に作り上げていき、それが今では150社以上に上る。

GBには、年間2,800社(日本企業が約1,300社)の新たなベンチャー企業の情報が入ってくる。そのうち、最終的には約40件程度の投資を実行しており、投資総額は約50億円。日本で大口資金調達するベンチャー企業の約9割はGBが投資検討を行うという、非常に強固なフローソースを作り上げた。

それだけにとどまらず、GBでは従来のIT領域に加えて、リアルテック領域への投資をこのほど強化している。

宇宙ベンチャーのアクセルスペース、協働ロボットを開発するライフロボティクスをはじめ、16年の投資先であるTrilliumは、創業者のデイビッド・ユーゼをはじめ、第二電電(現KDDI)などの創業者千本倖生、名門レーシングカーチーム「aprmp」の母体会社aprの会長を務める小山伸彦らという強力な経営陣を編成しており、自動車の車載ネットワークを対象とした暗号化・認証セキュリティソフトを開発している。

また、空撮測量サービスを手掛けるイスラエル・Dronomyの提供するドローンは、建物の壁面近くまで自律飛行が可能なため、建物間やクレーン周りのデータも取得でき、高い精度の3Dデータモデルが生成する。同社創業者のオリ・アフェクは、イスラエル空軍でドローンの研究開発に従事していた経歴を持つ。

さらに、銀行口座を持たない人でも送金・決済ができるプラットフォームサービスのフィリピン・Coins.ph、世界初の銅ペーストの実用化に成功したマテリアル・コンセプト、IoTの開発・運営を簡単に行えるプラットフォームサービスXSHELL、メッセンジャー用AI(人工知能)アプリケーションの韓国・Fluenty、人工知能型広告配信を手掛けるイスラエル発のYouAppiなど、非常に多彩な顔ぶれだ。

「投資領域が変化すると予測し、14年頃から入念に準備してきた。三菱電機の人工衛星の設計者や、ソニーの人工知能の研究者ら、技術系で尖った人材の採用を強化した。元々は投資経験がない人材を、GB内でベンチャーキャピタリストとして養成してきた。今では彼らが勢いよく投資活動を行っている」
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文=土橋克寿 写真=セドリック・ディラドリアン

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