ビジネス

2017.03.08

金正男暗殺事件に新展開 マレーシア雇用主の正体(上)

(Photo by Rahman Roslan/Getty Images)


加えて、MKPグループのもう一つの主要事業として、船舶建造がある。同社のホームページで紹介されている「船舶」の中には、海軍の艦船と思われるような代物も紹介されている(写真1参照)。もしこれらが海軍向け艦船であれば、北朝鮮との「兵器及び関連物資」の取引を禁じた国連制裁にも違反していることとなる。

写真1:MKPグループのホームページに掲載された艦船の写真


(http://www.mkpholdings.com.my/imageGallery/Shipping/ship_gallery.htm)

さらに、MKPグループは建設事業も柱としており、そこでは日本企業の建設作業車両の使用を宣伝している(写真2参照)。もしこれらの車両が日本から迂回輸出されて、北朝鮮のジョイント・ベンチャー企業に使用されていたとすれば、それは日本の輸出管理にも抵触しうるのではないだろうか。

写真2:MKPグループのブローシャーに掲載された日本製工事車両

(http://www.mkpholdings.com.my/image/get/moredetail/mkpbrochuredoc.pdf)

北朝鮮がマレーシアとのジョイント・ベンチャー・ビジネスを通じて、様々な国連制裁違反を行っていた可能性につき、検証されなければならない。

しかし、マレーシア政府は、これまでのところ国連専門家パネルの捜査にまったく協力せず、この企業や関係者に関する情報を何ら提供していない。もとよりマレーシアは北朝鮮に融和的で、厳しい制裁に協力的ではなかった。まさにこのようなマレーシアの脇の甘さが、今回の金正男暗殺事件で利用されたのである。[下に続く]

文=古川勝久

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事