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世界37カ国、700万人が愛読する経済誌の日本版

マジック・リープのロニー・アボヴィッツCEO(写真=ジャメル・トッピン)

圧倒的な仮想体験が注目されつつも、事業内容のほとんどが謎に包まれたマジック・リープ。グーグルやアリババなど大手企業がこぞって出資し、昨春には約8億ドルを調達した。次世代コンピューティングの旗手と目される話題のスタートアップを、本誌が独占取材。


フロリダ南部のビジネス街にある、一見何の変哲もない平凡な外観のオフィス。だが中に一歩足を踏み入れると、世界が一変する。

廊下を人型ロボットが闊歩し、ラウンジでは爬虫類のような緑色のモンスターがくつろいでいた。明かりを点けたり消したりするのは、まるでアニメの世界から飛び出してきたような妖精。そして、駐車場では23mもの高さがある戦闘ロボットが巡回する。

もちろん、これらの光景はすべて幻影。筆者が頭に装着している「MRヘッドセット」のもたらす魔法によって生み出されたものだ(MRはMixed Realityの略で、現実と空想を組み合わせた世界のこと。「複合現実」と訳される)。そしてこのヘッドセットを発明した企業こそ、フロリダ州に拠点を置くスタートアップの「マジック・リープ(Magic Leap)」である。

同社の創業者兼CEOのロニー・アボヴィッツ(45)は、有能なマジシャンさながら、なかなか手の内を明かさない。2011年の創業以来、同社は徹底した秘密主義を貫いてきた。その技術を実際に目にした者はきわめて少なく、その仕組みを知る者はさらに少ない。しかも皆、機密保持の誓約書にサインしているため、多くを語ろうとしない。

それでもマジック・リープには今、莫大な資金が流れ込んでいる。同社はこれまで総額約14億ドル(約1,600億円)の資金を調達し、16年2月にシリーズC(投資ラウンド)で史上最高額となる7億9,400万ドルを調達した。

一流のベンチャー投資会社はもれなく一枚かんでいるといっていい。出資者には、アンドリーセン・ホロウィッツに、KPCB、グーグル、フィデリティ、アリババなどが名を連ねる。さらに、ワーナー・ブラザースや、レジェンダリー・エンターテインメント(『GODZILLAゴジラ』『ジュラシック・ワールド』を製作)など、毛色の異なる出資者も見られる。直近の資金調達ラウンドで、マジック・リープには45億ドルもの評価額がつけられた。

業界内で同社にまつわるうわさは奇妙なものだ。いわく、「ホログラムを使って何かやっている」「レーザー光線を使っている」「現実を操作できるビルサイズのマシンを発明したが、商業化はできないだろう」などなど。

確かな情報の欠如が、こうしたうわさ話に拍車をかけている。結局のところ、マジック・リープはこれまで製品を一つも発売していない。製品の公開デモもなければ、独自技術の「ライトフィールド」についての説明もしていないのだ。

文=デビット・M・イーウォルト、翻訳=木村理恵

 

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