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2017.03.07 17:31

軍が起業家の揺りかご──イスラエル「8200部隊」の秘密(前編)


上位1%のさらに“上位1%”

8200部隊の前身は1948年のイスラエル独立宣言以前から存在した。それが73年の第4次中東戦争後に8200部隊となり、各分隊が1つのスタートアップのように独立して行動するようになった。
 
さらにIT産業の最新技術を国外に頼りきりでは危険だと、8200部隊が国内の研究開発のスタートアップ・ハブとなり、インターネット分野で役割を拡大させていった。イスラエルでは情報の90%は8200部隊がもたらし、同国諜報特務庁「モサド」にせよ、他の情報機関にせよ、同部隊なしに大きな作戦を遂行することはない。
 
それほどに8200部隊の影響力は大きい。イスラエルではほとんどの国民が、高校卒業後の18歳での兵役を義務付けられているが、8200部隊はそのうちの誰を採用しようが望みのままだ。高校在学中の理系の天才やハッカー向けの課外活動を利用して、早い段階から有望な新兵候補者の動向を追い始めることもある。

「8200部隊は全国の上位1%の、そのまた上位1%を採用できるのです」

そう話すインバル・アリエリ(40、写真1枚目)は、90年代後半に8200部隊に所属し、22歳までに同部隊の士官訓練校の教官になった。候補者を見つけると、部隊は時に半年以上もかけて、彼らに厳しい面接や試験、コミュニケーションや電子工学、アラビア語などの講義を課すという。
 
候補者は、面接を経て経歴のチェックを受けるが、数学やコンピュータ、外国語の技能はもちろん、真に求められるのは潜在能力だ。それを測るのは、すばやい学習能力や変化への対応力、チームへの適応力、他者が不可能と見ることにも果敢に挑む姿勢など。
 
たとえばドル・スクレル(39、写真2枚目)は、「高校時代の私はひどい生徒でした」と話す。だが、8200部隊は卒業の2年前に彼に目を付けた。未開発の才能を認めたのだ。

限られたリソースでやりとげる

8200部隊のヤイール・コーエン元司令官は、80年代前半に与えられたある任務のことが今でも忘れられない。

「予算3億ドルに値する仕事だが、君が使えるのは300万ドルだ」と上官は告げた。

「割けるのは3人だけ。未来を見て、何が必要になるか分析しろ」
 
除隊後、コーエンはイスラエル最大級の防衛用電子機器メーカー「エルビット・システムズ」に入社し、サイバー部門を創設した。 
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文=リチャード・べアール、翻訳=町田 敦夫、写真=ジャメル・トッピン

この記事は 「Forbes JAPAN No.32 2017年3月号(2017/01/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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