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スタートアップ的なメンタリティは部隊全体に浸透している。「ひどい高校生」だったスクレルも、最終的に敵国が発するシグナルを収集・解析し、情報に変えるチームの指揮を執るまでになった。

リソースは乏しく、信じがたいほどの重圧がかかっていたと彼は言う。

「選択は私に委ねられていました。チップを1枚しか持たずに、ルーレットのテーブルについていたようなものです」

それでもたいていの場合、チームは何かしら価値あるものを創案した。

「時々、なぜ可能だったのだろうと考えることがあります。無茶苦茶な話ですから。ただ、完璧である必要はなかった。バグや欠陥があってもよかったし、システムを手動でリセットしたことも。ほかでは得られない魔法のような経験でした」

無垢な若者と情報の組み合わせは、武器になることもあるらしい。彼らに目もくらむような自由と責任を与えるシステムもまた同様だ。

「具体的に何をすべきかは誰も教えてくれません」とスクレルは言う。

「単に『問題はこれだ。解決してこい』と言われるだけです。それも厳しい期限付きで。だから我々は創作し、“起業家”的になるのです」

8200部隊では、上官の決定が誤っていると思えば、末端の兵士が司令官と話すことさえできる。実際、スクレルは「国家の最上層にいる意思決定者たち」と電話で直接話したこともある。

「私は19歳でした。これまでの人生で、あれ以上の大きな責任と他者への影響力を持っていた時期はありません」

【後編はこちら】


8200部隊(Unit 8200)/イスラエル諜報機関◎独立以前から存在した「シンメン2(ヘブライ語で「新たな軍務」)」が1973年の第4次中東戦争後に再編成され生まれたIT産業研究開発のハブ。実態はほとんど知られていないが、イスラエル軍の情報作戦には欠かせない諜報機関。

文=リチャード・べアール、翻訳=町田 敦夫、写真=ジャメル・トッピン

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