若くて自由な精神を持つ消費者に訴えかける、まさにバンズらしい動画だ。パンクロックやスケートボードが大好きな少年がこれを見たら、きっとバンズを欲しくなるだろう。
カリフォルニア発祥のバンズは12年前、大手ライフスタイルアパレル企業のVFコーポレーションによって推定3億9600万ドル(約451億円)で買収された。その後バンズは急成長を遂げ、23億ドル(約2622億円)規模のグローバル企業となった。VFコーポレーションはノースフェイスやティンバーランドなどの大手ブランドを傘下に持つが、その中でもバンズの規模と成長ペースはトップクラスだ。
だがバンズは、成熟した企業になった今もなお、“日焼けしたカリフォルニアのスケーター”のマインドのままで事業を運営したいと考えている。
そのため同社は、「ロイヤリティの高い顧客を評価すること」と「自社の強みを明確に自覚し続けること」を徹底している。新しい市場に事業を拡大する時も、その方針を変えることはない。実際、2016年にはその方針でアジア太平洋地域に進出し、前年比25%増の収益を上げている。
「世界中のどこに行っても、我々のブランド・アイデンティティーは極めて一貫している」と、バンズのグローバルブランド担当プレジデント、ダグ・パラディーニは言う。
同社は、“若々しさ”がブランド成功の鍵であることを認識している。過去から今まで続く、その本物の“若々しさ”がなくなれば、バンズのシューズを履きたいと思わせるものはなくなってしまうだろう。
この戦略はその歴史を見てもわかる。バンズは1966年、バン・ドーレン兄弟がカリフォルニア州アナハイムに、ラバーソールのシューズを製造・販売する店舗をオープンしたのが始まりだ。1970年代にはスケートボーダーのトニー・アルバ、ステイシー・ペラルタと提携。現在も芸術、音楽、スポーツ、ストリートカルチャーとの関わりを大切にしている。
パラディーニは、「我々の方程式は『過去の遺産+進歩』だ」と話す。これは概念的でもあるが、文字通りの意味でもある。バンズはオーセンティック、エラ、スリッポン、オールドスクール、Sk8-Hiという最も人気の高い5つの型のスニーカーを維持しつつ、それを新たな生地や柄、カラーで展開することで“継続的に進化”をしているのだ。
また、同社は卸売りと直販のバランスがいいのも特徴だ。直販ではシュプリームのような人気ブランドとの戦略的なコラボレーションを推進。「高感度なセレクトショップのオープニングセレモニーでも、百貨店大手のコールズやJCペニーでも商品はよく売れている。これは素晴らしいことだ」とパラディーニは言う。
だが、どこでバンズのスニーカーを購入しようと関係ない。バンズを選ぶことが意味するのは同じことなのだ。そして今、バンズは動画「This Is Off the Wall」を通して改めて、自分たちが50年前から変わらない“クールな若者の仲間”であることをファンに伝えようとしている。
パラディーニはこう言う。「自分を信じ、自分らしくある限り、皆さんは私たちの家族の一員だ」