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ビジネス展開としては、医療機関をクライアントとした2つのアプローチが予定されている。

一つは細胞加工技術と細胞加工機器をセットで医療機関に提供し、院内で毛髪培養から移植までを手がけるもの。もう一つは、同社が院外での毛髪培養を請け負い、再生した毛髪を医療機関に提供するというものだ。

いずれにおいてもカギを握るのが毛髪培養の機械化だ。培養法自体は同社と理研の間でほぼ確立されており、残る課題は品質の安定化と大量生産の両立である。これを担う細胞加工機器開発の強力なパートナーとして京セラが参加し、基礎技術、生産技術、事業展開の三本柱が整った。今後は国で決められた手続きを経た上で、自由診療として毛髪再生ビジネスを展開する運びとなる。

ユーザーからすればコストが気になるところ。杉村はこう説明する。

「初期には高額診療となると思います。将来的に患者数が増えていくことで治療コストを抑制していけると考えています」

毛髪の次は、歯の再生を目指す

同社の描くゴールは、毛髪再生技術の実用化だけではない。目指すのは三次元の器官再生である。器官再生医療は、世界中の研究者が取り組みながら未だ成功には至っていない。その実用化には器官再生のみならず、再生器官の保存、さらには移植技術など解決すべき課題がいくつもある。これらをクリアするため、同社はすでに毛髪の次のターゲットに取り組んでいる。歯の再生である。

加齢により歯を失う高齢者は多い。食に関する器官の損傷は、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を著しく低下させるばかりか、歯周病が糖尿病に直結するリスクも指摘されている。

では、オーガンテクノロジーズはどのような治療法を目指すのか。杉村は言う。

「歯の喪失に対する歯科治療については、世界的にも歯の喪失部位の骨にチタン製のインプラントを埋入する治療が行われ、治療法として確立してきました。しかしながら最近はインプラントの不適切な治療やインプラント性歯周炎など、社会的にインプラント治療が問題になってきています。これはインプラントが歯周組織を持たないことが原因と考えられています。そこで私たちが、次のビジネス展開として目指しているものが、歯の生理機能に重要な歯根膜付きのインプラント治療です」

歯の生理機能を持つインプラントを骨に埋め込むことができれば、それはまさに本人の「歯」として機能し、知覚機能や免疫機能も回復する。実現すれば健康寿命の延長に大きく貢献するだろう。同社は歯の再生医療についても、毛髪再生と同時期の実用化を目指している。ただし、あくまでも最終目標は三次元の器官再生だ。杉村は言う。

「毛髪から歯へとスケールアップしていく中で培った技術を活用して、さらに大きな器官を再生する。器官保存技術も既に特許を取得しており、器官の保存機器をメーカーと共同で開発中です。私たちは器官の構築だけでなく、器官のデザイン、維持育成までを視野に入れた器官再生医療を実現したい。それを通して多くの方々の健康と福祉へ貢献すると共に、残された成長分野の一つである再生医療分野の発展により、日本発の産業革命に貢献したいと考えています」オーガンテクノロジーズが究極のゴールに到達するとき、医療は新たな次元に入りそうだ。


杉村泰宏(すぎむら・やすひろ)◎1978年、大阪府生まれ。京都大学経済学部卒業後、モルガンスタンレー証券等に勤務。2009年、企業研修サービスのシンク・アンド・アクトを設立、15年オーガンテクノロジーズ代表取締役就任。理化学研究所、京セラとともに毛包再生技術による脱毛症治療の実用化を目指す。

文=竹林篤実

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