生まれつきの「交渉人」 大統領の愛娘イヴァンカとは─

写真=マット・ファーマン


多くの人が忘れがちだが、イヴァンカは、同世代のパリス・ヒルトンのように無能なソーシャライト(社交界の名士)になっていてもおかしくはなかった。確かにイヴァンカは恵まれた環境で育っている。だが、決して甘やかされてきたわけではない。

イヴァンカの母親であり、ドナルドと1992年に離婚したイヴァナは、共産主義国のチェコスロバキアで生まれた。イヴァナは祖国での暮らしを忘れることはなく、よく子供たちを連れて訪れていた。

「子供たちには規律をしっかり学ばせ、厳しい愛をもって接したわ。新しい自転車が欲しいなら、努力して手に入れるように教えたの」とイヴァナは語る。

「父からたくさんのものを与えられて育って、とても幸運だった。でも、同族企業の場合は、必ずしもそれがプラスに働くとはかぎらない」とイヴァンカは語る。時には家族同士でケンカすることもあるが、「少なくとも互いに正直でいられる」のが家族の強みだという。

トランプとイヴァナは何かと非難されることも多いが、子育てには成功していると言えるだろう。子供たちは3人とも仕事に熱心だし、ゴシップ誌で取り上げられたとしても、たいていは無害な内容でしかない。

大学卒業から1年間、イヴァンカは不動産開発業者フォレスト・シティ・エンタープライズに入社し、業界の有力者であるブルース・ラトナーのもとで働いた。トランプはその頃のことをこう振り返る。

「彼女は1年間、別の会社で働いてみたかったんだ。それから1年後、ブルースから電話があり、『もっと長くいてもらってもいいかな?』と聞かれた。もちろん、『ノー』と答えたよ」

イヴァンカは、05年にトランプ・オーガニゼーションに入社した。

最初は、男社会であるニューヨークの不動産業界に馴染まなくてはならないと思い、精一杯だったという。

「同化しようと思って、髪型をボブにしたり、黒のパンツスーツを着たりしたわね」

でも自信をつけるうちに、男性がひしめく会議室で唯一の女性であることのメリットにも気づいた。

「ほかの人と違うというのは、強みにもなりうる。しかも、男性とミーティングをすると、たいてい私をフォローアップしてくれるの」
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文=モンテ・パーク、翻訳=フォーブスジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.32 2017年3月号(2017/01/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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