被災地で感じたシャンプーと口紅の力[オトコが語る美容の世界]

Photo by Yuriko Nakao / gettyimages


東日本大震災でも多くの美容関係者がボランティアにいた。“ヘアカットで気分サッパリ!”というのは見かけだけではない。不安を聞くのが上手な美容業の人間は、うまく話題を流しながら楽しい会話していく中で、被災者の人々の明るくなる姿に逆に元気づけられ、また被災地に通うことができる。そんな良い気持ちの循環の作業ができるのだ。

もうひとつ、ハリウッド化粧品として賛同・協力している気仙椿ハンドクリームプロジェクト(http://kesentsubaki.jp/)も、美容での被災地支援のいい実例ではないだろうか。

被災地の山林に自然の状態で落ちている椿の種を、地元の障害者施設の人やお年寄りに拾ってもらい、搾油して化粧品をつくる。そんな地元還元まで考えた企画だ。しかもこの東北の椿は、世界の椿の中でも最北端に自生しているそうだ。

20代の女性が東京から出向いて立ち上げ、地元の女性と一緒に心も仕事環境も復興させたグッドアイデア賞なプロジェクトで、女性のお医者さん達が集まるボランティア団体と協力しできたハンドクリームは、東北海沿いの寒い仕事環境で荒れた手を癒している。

化粧品やメイクも、災害では重要な位置付けである。東北にはお年寄りの女性も大勢いた。みなさん立ち上がりたいが、元気が出ない。体力もない。でもコミュニティを引っ張っていくおばあちゃんの知恵や経験は多い。

そんな時に岩手県で「口紅の力」というプロジェクトがあったのを聞いた。元気がないおばあちゃん達をメイクで励まそうというもので、食料や住居支援の専門家からすると、重要度は相当低いと思われた企画だった。ところが、おばあちゃん達は、女子高生のように恥じらいながら「私も綺麗なったかねえ」なんて言いながら、満面の笑顔で歩き出す。家事を手伝う、炊き出しで料理を作る。口紅でそんなパワーが出るのだ。色もまた重要で、真っ赤な口紅が効果抜群なのだ。

いま日本は世界最速で高齢化社会に邁進している。お年寄りもたくさん増えてくる。自然現象として男性より女性が長生きのため、おばあちゃんが増えてくるのだ。おばあちゃんを元気にするのは、食事や運動、会話はもちろんだが、口紅ひとつだったりもする。贈り物をする際には、靴下や毛布というプレゼントも悪くないが、赤い口紅なんてのも粋かもしれない。

美容業に携わる筆者が綴る「オトコが語る美容の世界」
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文=朝吹大

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