携帯電話の充電キオスクを展開する米ヴェロシティ(Veloxity)の調査によれば、買い物客の75%は実店舗での買い物中にも、購入に関する決定のために携帯電話を利用している。さらに、これらの人たちの90%が、携帯電話で商品の検索や比較をしている。
充電切れになることは、以前は店内への滞在時間が短縮される可能性があることを意味した。だが、北米では次々に誕生する店舗内の充電スポットが、その状況を変えつつある。
北米では1日6000台が利用
商業施設などにロッカー型の充電器を設置するチャージイットスポット(ChargeItSpot)が市場調査会社GfKに委託した調査によると、店舗内に充電器があることは、消費者の滞在時間の延長と商品の購入につながっていることが分かった。
店内で安全に充電を行えることで、来店者が店内にとどまる時間は2倍に伸び、来店者数は29%増加、来店者が購入に至る割合は54%増加したという。携帯電話の電池残量が0%だった場合、100%まで充電するには約2時間がかかる。
北米全体では、チャージイットスポットの充電器は現在までに250万台以上の携帯電話に利用されており、1日当たりの利用台数は約6000台に上っている。
無料サービスの「代金」は情報
小売店は携帯電話の充電を無料で提供する代わりに、利用者に関する情報を収集することができる。つまり、充電器は顧客獲得ツールでもあるのだ。
充電中の携帯電話の安全を確保するためのロック機能を作動させるには、利用者は自分の電話番号を入力する必要がある。また、充電器から携帯電話を取り出す際には、3つの質問からなるアンケート「QuickPoll(クイックポール)」への回答を求められる。
質問の内容は、利用者の購買経験や好みなどを把握することを目的に、小売店側が選択して決定。利用者が入力した内容は、リアルタイムで確認することができる。充電が完了し、携帯電話が取り出されるとその後30分以内に、店側はその電話番号にテキストメッセージを送信することができるようになっている。
アンケートへの回答は任意だが、チャージイットスポットが充電器を設置している顧客8社の店舗で行った試験調査によれば、利用者の70~90%が入力に応じている。
充電器の設置費用は、顧客が求める設置台数やマーケティングのために行う情報収集の機能によって異なる。ただ、チャージイットスポットによると、1日当たりのコストは店舗が販売する商品1点の価格に満たない程度だという。
2014年にチャージイットスポットの充電器を初めて店内に設置したのは、米デ百貨店チェーンのニーマン・マーカスだった。同社は現在までに、全店舗への設置を完了している。
チャージイットは2015年までに、米国内の18州とカナダで合計150か所に充電器を設置。今後は35州とカナダを合わせ、500か所への設置を目指している。