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この取り組みに賛同したのが、オーストラリア出身のプロゴルファーで事業家でもあるグレッグ・ノーマンだった。ノーマンとはインテリアや環境設計で協力。現在、オーストラリアで1万1300戸を開発。暮らしと自然を融合させる“面の環境”で、中国やアメリカにも進出した。

「アメリカではデベロッパーとしてコミュニティ開発と言っています」と話す。

自然のトレッキングコースと住まいが隣り合わせになった町など、全米42カ所で開発。ヒューストンの町は2013年度の全米ベストシティの3位に入った。環境への貢献で有名になり、和田はロサンゼルス市長をはじめ、ポートランド、デンバー、シアトルなど各都市の市長から招かれている。

しかし、和田は隔靴掻痒である。「日本のマスコミは、国内が人口減少だから海外に進出していると言う。それは間違いです。今まで培ってきた環境技術をもって国外に行けば、その国の人たちに喜んでもらえるし、事業の拡大にもなる。出資だけの海外進出では住宅事業は伸びないし、我々がやってきた文化を海外に届けることなんてできません」

顧客本位の発想は、実は和田が若い頃、客に謝罪に走った経験が原点だ。当時は工事会社との連携がうまくいかず、建てた家の庇が1メートルも隣家の敷地にはみ出したことすらあったという。

いま和田は、「住宅というのは、社会課題の中心にあるんです」と、説き続けている。

若い世代が入ってくる多世代循環型の町を神戸・六甲アイランドにつくるなど、ユニークな仕掛けをつくっている。愛着がもてるコミュニティを問い続ける彼は、こう言うのだ。「思想をもたない事業は、絶対に成功しません」


わだ・いさみ◎1941年、和歌山県生まれ。関西学院大学を卒業後、積水ハウスに入社。入社3年目で全国1位の販売成績を挙げる。90年に取締役、98年に社長、2008年に会長兼CEOに就任した。

文=藤吉雅春、写真=佐藤裕信

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